グアルディオラが最強のチームを作る要因

　実際にはオーバーロードとアイソレーションのコンセプトは、2つを組み合わせて用いなければ、どちらか片方だけではその効果ははるかに小さくなってしまう。シティに対する守備を非常に難しくしている理由の一つは、彼らが突破を図ってくる攻撃のたびに毎回、どちらのコンセプトを用いてくるのか断定できないという点にある。

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　素早いパスワークのコンビネーションを用いたオーバーロードを使ってくるかもしれないし、どちらかのサイドに引きつけた上でアイソレートした逆サイドの選手にボールを出すのかもしれない。

　これらの異なるコンセプトが成功に繋がるのは、グアルディオラの指導の下でシティが行う練習方法のおかげだ。

　オーバーロードの状況下で効果的にプレーするためには、効果的にスペースを埋めることができなければならない。シティがピッチ上のある部分にオーバーロードを作り出そうとする時、選手は異なるライン上にジグザグ状のポジション取りをする。これが効果的に複数のトライアングルを作り出し、攻撃の選手がお互いに連係し合うことで、ボールを持っている選手には常にパスの出しどころの選択肢が複数存在する。

　結果として、ボールがペナルティーエリアに向けて進められていく中で次々と新たな選択肢が生まれてくるように思えるため、シティに対して相手が安定した守備を続けるのは常に困難となる。

　オーバーロードを作り出すスペースを消すことに成功したかと思えば、突然のようにボールはピッチの反対サイドへとスイッチされ、シティの攻撃のスピードや角度はすぐに切り替えられてしまう。

（文：リー・スコット）

『ポジショナルフットボール教典』

定価：本体￥2000+税

＜書籍概要＞
噛み砕いて考えれば考えるほど、グアルディオラのゲームモデルはシンプルそのものである。 彼らがあれほど効果的に戦えるのは、同コンセプトを寸分の狂いもなく実行に移しているからこそだ。 本書を通して、シティの選手がどのように動き、どのようにパスを出しているのか、そしてその理由について明確に説明することを試みたい。 最後まで読み終えたあと、グアルディオラが用いる戦術コンセプトを今までより少しでも楽しんでもらえるようになったとすれば、この試みは成功だったと見なすことができるはずだ。

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【了】