中島翔哉に居場所はあるか? ダービー快勝のポルトに物足りなさ、復帰までの道のりは…

現地23日にポルトガル1部リーグ第28節が行われ、ポルトはボアヴィスタとのダービーマッチを4-0で制した。リーグ戦再開から欠場が続く中島翔哉は、この試合ももちろん不在。まだ先行き不透明な状態が続く。それでも優勝に向けて戦力としては欠かせないはずだ。では、中島はどうすればチームに復帰することができるのだろうか。(文:舩木渉)

2020年06月24日(Wed)12時32分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
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ダービーは“マレガの日”

ムサ・マレガ
【写真:Getty Images】

 単純なことでも積み重ねれば最終的に大きな差となって結果に表れる。そんな快勝だった。

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 ポルトガル1部リーグ第28節が現地23日に行われ、ポルトがボアヴィスタに4-0で勝利。同じ街に本拠地を置くクラブ同士のダービーマッチを華麗に制した。

 ムサ・マレガが自身の2得点も含め、全ての得点に絡む大活躍だった。まさに“マレガの日”と言うべき躍動である。ただ、やっていたことは1つだけ。相手の弱みを徹底的に狙い、ディフェンスラインの背後へ抜け出すことを繰り返した。

 前半はやや停滞感のある展開だったが、後半は凄まじかった。ボアヴィスタの5バックには大きな欠陥があった。センターバックの3人がゴール前に固まりすぎてしまい、特に左サイドバックが外側に引き出されると、左ストッパーのカバーリングが遅れる。その間にできたスペースは狙い放題になっていて、同時にマレガが最も得意とするエリアでもあった。

 ポルトは後半から投入した右サイドバックのウィルソン・マナファをタッチライン際に走らせ、中央から右にボールを展開する。その時、寄せてくる相手左サイドバックのマルロンの背後にできるスペースを、「3人目の動き」でマレガが狙う。

 実際に、ポルトの2点目と3点目につながるPK獲得はマレガのフリーランニングからだった。ボアヴィスタの左ストッパー、グスタヴォ・デュラントが突破してきたマレガを倒して1本目のPKを獲得。さらに2本目のPKは、抜け出したマレガのクロスをブロックしようとしたデュラントのハンドによるものだ。

 連係がバラバラなボアヴィスタのディフェンスラインをやすやすと攻略したポルトは、次々にゴールネットを揺らした。一方で、チームとしての天井を感じた試合でもあった。

 6月3日のリーグ再開初戦から煮え切らない試合が続き、ボアヴィスタ戦前の段階で1勝1分1敗と足踏み状態になっていた。勝ったのは序盤にスーパーゴールが決まったマリティモ戦だけ。3試合でわずか2得点、マレガがリーグ戦でゴールネットを揺らしたのが2月中旬の第21節ヴィトーリア・ギマランイス戦以来だったようにストライカーはゴールを決められていなかった。

 残留争い中の下位クラブにも苦戦を強いられた。前節まさかダントツで最下位のアヴェスにスコアレスドローを演じることになるなど、誰が予想しただろうか。

やっぱり必要なのは…

 苦戦の背景にある課題として明らかだったのは、戦い方の幅の狭さだ。用意したプランが狂い始めた時に軌道修正しきれず、ピッチ上の選手と似通ったタイプの交代カードしか選択肢がない。大胆に流れを変えるようなことが苦手で、守備が比較的安定している一方、攻撃パターンが単調になりがちだった。

 ボアヴィスタ戦はマレガが得意とするディフェンスラインの背後への飛び出しに相手の対策が遅れ、ずっと同じパターンを狙い続けていても勝てた。後半は、ほぼ左サイドを使っていないくらいの徹底ぶりだった。

 逆にもしボアヴィスタが柔軟に対応してきて攻撃の芽を潰されていたら、いつものように手詰まりになっていたのではないか…と思うわけである。でも、残念ながらポルトのベンチには“スーパーサブ”的な選手がいない。Bチームから引き上げられた経験の少ない若手も多く、同じような特徴を持ったFWが複数いるなど、決して層が厚いとは言えない状態だ。

 こういう時に「いてほしかった!」と思うのは、実は中島翔哉のような選手なのではないか。現地メディアではポルトがリーグ戦再開から停滞している要因として、中島の不在を挙げるところもあった。事前の想定を逸脱した即興性の高いプレーを持ち味として発揮できる中島のような選手が、チームに1人くらいいたって構わない。むしろ、そういうイレギュラー的な存在が必要とされるシーンだって山ほどある。

 2位ベンフィカがサンタ・クララに敗れる波乱があり、ポルトは優勝戦線で一歩前に出たが、まだまだ油断はできない。これから先、もっと勢いをつけてライバルを突き放すためにも、中島をできるだけ早くピッチで戦える状態にすることが必要なのではないだろうか。

 では、どうやってチームに戻すか。これが本当に難しい。代理人を務めるテオドロ・フォンセカ氏は地元メディアに対し「非常にデリケートな状況」と説明したが、まさにそうだと思う。1ヶ月近くチームから離れた選手を、1つも勝ち点を落とせない緊迫した状況で、しかも新型コロナウイルスの影響もある中、波風立てず戦列に復帰させなければならないわけだ。

中島翔哉復帰の難しさ

中島翔哉
【写真:Getty Images】

 5月中旬に妻の体調不良を考慮してチームから離脱し、自宅隔離に戻ったという中島について、様々な情報が流れてきた。例えば、ポルト移籍の際に発生した多額のボーナス(一説には1億円を超えるとされる)が未払いになっているなど。最初に報じたのは『コリエレ・ダ・マーニャ』という一般日刊紙だったが、知人の大手スポーツ紙記者は「こんなこと全く知らないぞ!」と驚いていたほどだ。

 後になって代理人が「金銭的な問題はない」と否定するに至るが、中島の動向がつかめなくなってからは、様々な憶測が飛び交うようになっていた。ようやくフォンセカ氏が事情を説明するためメディアに出てきたのが、今月22日のことだ。

 契約に守秘義務があるため金銭的なことに関して具体的な言及はできず、代理人なので選手や自分のイメージダウンにつながることは言わないだろう。そういう裏側的な事情を割り引いて考えても、フォンセカ氏の言葉にはある程度納得感があった。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で中島をサポートしていたスタッフがポルトガルを離れ、体調の優れない妻と、小さな子どもだけが残された状況ということだ。言葉も文化も違う異国の地で、孤独とも戦わねばならない家族を残して、仕事とはいえサッカーのために家を空ける難しさは容易に想像できる。

 そして復帰のために「全ての手順を踏まなければならない」ということも、その通りだろう。流行り病の感染有無を調べる検査を受けて陰性を証明したうえで、監督やスタッフ、チームメイトたち全員から理解を得なければならない。おそらく「理解を得る」というのが最も難しいはずだ。

 フォンセカ氏が「クラブは選手本人との契約を交わしたが、家族と契約しているわけではない」と言ったように、他の選手たちからしてみれば「家族はてめえの問題だから、てめえで解決せえや」という話である。

 病気の家族に寄り添う大切さへの理解は当然あるだろうが、「それぞれ家族はいるし、みんな不安を抱えながらでも練習しているよ」といった、どこかで折り合いをつけて仕事に集中すべきという考えの人間もいるはずだ。

 1ヶ月も離れていた選手がいきなり復帰し、優勝に向けて団結していたチームに亀裂が走る可能性も考えなければならない。「よく戻ってきた!」と歓迎してくれるチームメイトもいるだろうが、「今更戻ってきやがって…」「今までの不在は何だったんだ?」と思う選手だっているだろう。

 特に中島の不在によって出場機会を得ていた選手ならなおさら。ちょっとした不満がきっかけとなってチームのまとまりにヒビが入り、壊してしまう可能性を考慮すれば、いくら選手本人が復帰を望んでも監督やスタッフ、フロントも含めて決断には慎重にならざるを得ない。

今季中の復帰はあるか?

 チーム練習に戻るにあたって、これまでの事情と自分の考えを懇切丁寧に説明し、理解を求める作業は骨が折れるだろう。だが、必ず通らなければならない道であり、もし迷惑をかけたことを詫びてもチームメイトたち全員の心の底からの了承が得られなければ、今季中の復帰は諦めるべきだとも思う。

 特殊な外的要因があったとしてもシーズン終盤のタイトルがかかる重要な1ヶ月間に個人的な理由でチームを離れたことの重大さは、まず中島本人が十分に理解しなければならない。サッカーで最優先すべきは「チーム」であり、プロフェッショナルとして背負う責任や義務の意味も考える必要がある。フォンセカ氏の言う「デリケートな状況」とはそういうことだ。

 とはいえ、リーグタイトル奪還のためには中島の力が必要な一面もある。ベンフィカがやや調子を落としているものの、終盤までギリギリの戦いが続くのは間違いなく、幾度となく逆境に直面するだろう。そんな時に、他のチームメイトたちが持っていないような中島のアイディアや積極性が突破口になるかもしれない。

 ポルトガル1部リーグは残り6試合。ポルトは最終盤に強豪スポルティングCPや、苦手とするブラガとのマッチアップを残している。ベンフィカの追い上げを振り切るには、勝ち星は1つも落とせない。やはり今のままでは不安は拭えず、優勝を確実なものにするにあたってどこか物足りなさもある。

 だからこそ、ポルトが文句なしの力強さで勝ち続けるためのラストピースは背番号10の日本人だと信じて、カムバックの時を心待ちにしている。

(文:舩木渉)

【了】

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