イブラヒモビッチに“頼り切り”。ミランが格下相手に大苦戦した理由。アイデアを欠いた虚しき90分

セリエA第29節、SPAL対ミランが現地時間1日に行われ、2-2のドローに終わっている。リーグ再開後、レッチェ、ローマに連勝と好調だったミランだが、この日は残留争いに苦しむ相手に勝ち点2ポイントを取り損ねた。ズラタン・イブラヒモビッチ復帰などはポジティブな要素だが、一体なぜ苦戦を強いられたのか。(文:小澤祐作)

2020年07月02日(Thu)11時30分配信

text by 小澤祐作 photo Getty Images
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不運な2失点

ミラン
ミランのSPAL戦スターティングメンバー

 リーグ戦再開後、レッチェに4-1、ローマに2-0と調子の良さをアピールしていたミラン。しかし、迎えたセリエA第29節、敵地でのSPAL戦は思わぬ苦戦を強いられることになった。

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 4-2-3-1のフォーメーションで試合に挑んだミランの立ち上がりは決して悪くはなかった。トップ下に入ったMFルーカス・パケタを中心に攻撃への高い意欲を見せ、SPAL守備陣を深い位置まで押し込む。4分にはさっそくパケタがシュートを放つなど、序盤からペースを握ることはできていた。

 しかし、一瞬の隙というものは非常に恐い。ミランは14分、相手にコーナーキックのチャンスを与えると、最後はMFマッティア・ヴァローティにゴールネットを揺らされたのだ。蹴り込まれたボールをクリアすることができず、もったいない失点となった。

 さらに30分、MFブライアン・ダボが弾いたボールを自陣中央でFWセルジョ・フロッカーリに拾われると、同選手が浮き球のボールをボレーシュート。GKジャンルイジ・ドンナルンマもお手上げのスーパーゴールが突き刺さり、SPALは戦前予想を大きく覆してミランから2点のリードを奪ったのだ。

 アウェイチームの守備陣からすると、不運な2失点という見方もできなくはない。完璧に崩されているわけではなかったし、その他に危険な場面がなかったのも事実。身長190cm・体重88kgの巨漢FWであるアンドレア・ペターニャを封じることも十分にできていた。

 ただ、当然ながら2点ビハインドを背負った状況を変えることはできない。ミランはまず1点を返すため、より攻撃への姿勢を強めた。しかし、ここでも同チームは思わぬ苦戦を強いられることになる。

ゴールから遠い攻め

ズラタン・イブラヒモビッチ
【写真:Getty Images】

 先述した通り、ミランはトップ下のパケタを中心に攻撃を展開。5バックで守備を固めるSPALの中央を崩すことは容易ではなかったが、うまくサイドにボールを散らしながら相手を左右へと揺さぶり、綻びを作り出そうとする姿勢は見えた。

 実際、シュートも多く放っている。これは、2失点を喫する前からそうだった。データを見ても、ミランは前半だけで14本ものシュートを浴びせている。43分にはMFマルコ・ダレッサンドロが退場。数的優位にもなった。

 しかし、ゴールは遠い。その理由は非常にシンプルだ。引いた相手に対し、ボックス内で勝負できる選手がいなかった。

 この日、1トップに入ったのはFWアンテ・レビッチ。再開後の彼自身のパフォーマンスは決して悪くないのだが、SPAL戦は存在感を完全に消され、ほとんど決定的な仕事を果たすことができなかった。クロアチア人FWの問題というよりは、中央を固めるSPALを前に、チーム全体として1トップへボールをなかなか収めることができなかった。

 そうなると、レビッチはボールを受けようとサイドに流れる。実際、36分にはこの形からMFハカン・チャルハノールがゴールネットを揺らしている(VARによりレビッチのオフサイド判定)。しかし、その他の場面ではサイドにボールを流すは良いが、そこからの展開に苦戦。そうなると、1トップを事実上“失った”ミランは、ゴールに近い場所でなかなか勝負できず、必然的にミドルシュートが増えた。

 そうした状況が続く中、後半には怪我から復帰したFWズラタン・イブラヒモビッチがレビッチに替わって登場。ボックス内で圧倒的な強さを誇示できる選手が入った。元スウェーデン代表FWはポストプレーにも長けるため、攻撃のバリエーションはより増えるかと思われた。

 ただ、ミランの攻めは非常に単調。イブラヒモビッチが入った途端に、クロス一辺倒な攻めに転じたのである。確かに背番号21は空中戦で強さを発揮したが、他の選手はクロスに対して持ち味を活かせず。結局は、イブラヒモビッチに頼りっきりな攻撃となってしまったのだ。

 データを見ても、前半は22本だったクロスの数も、後半は39本に増加していた。アイデアがなく、個人に頼った攻め。ミランに可能性は感じなかった。

待ち受ける試練。その中で唯一の…

ルーカス・パケタ
【写真:Getty Images】

 ミランはFWラファエル・レオン、後半ATの相手のオウンゴールによって何とか勝ち点1を奪取することに成功。ただ、残留争いに苦しむ相手を前に2ポイントを落としたのは、やはりいただけない。

 この日、ミランは前半だけでシュートを14本放ったが、枠内に飛んだのはわずか3本。90分間では計40本も放っているのだが、ペナルティエリア内でシュートを放てたのはその内のわずか36%。枠内シュートも計9本と決して褒められた数字ではない。

 ミランに募る不安は山積みだ。フロントのゴタゴタはもちろん、この日はFWサム・カスティジェホ、DFテオ・エルナンデスが負傷交代。詳細な状態はわからないが、過密日程を乗り切れる選手層がないミランにとって彼らが離脱することになれば、大打撃となる。

さらに、ここからはラツィオ、ユベントス、ナポリとの3連戦が控えている。いずれの3チームも再開後は好調で、単純な力関係で見ればミランがポイントを落とす可能性は非常に高い。このままの状態ではチャンピオンズリーグ(CL)出場権はもちろん、ヨーロッパリーグ(EL)への出場も危うい。

 その中で唯一の希望は、パケタの好調ぶりだろうか。この日はフル出場を果たしており、データサイト『Who Scored』によると、シュート数10本、ドリブル成功数4回、パス成功率88%を記録。同サイト内ではMOMに選出されているなど、輝きを放った。

 自身のアイドルを元ミランのMFカカとしているパケタは、これまで4-3-3時のインサイドハーフで起用されると持ち味を活かせず存在感を消していたが、やはりトップ下でこそ能力が活きる。テクニックがあり、ボールを持てるため、よりゴールに近いエリアでプレーさせることが最適。それを証明したと言えるだろう。

 あとは、ステファノ・ピオーリ監督が「もっと決定的なプレーを期待したい」と話した通り、シュートの精度を高めたいところ。この日も計10本のフィニッシュを放ちながら無得点と寂しい数字が残っている。決定力に磨きをかけ、ここから名門を引き上げてほしいものだ。

(文:小澤祐作)

【了】

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