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リバプール、南野拓実は何タイプか? ライバルの決定的な違いと苦戦で明らかになった必要な存在

プレミアリーグ第33節、リバプール対アストン・ビラが現地時間5日に行われ、2-0でリバプールが勝利した。リバプールはなかなか攻撃のチャンスを作れずにいたが、試合終盤に2得点を挙げて帳尻を合わせている。南野拓実はこの試合で出場機会がなく、ライバルたちに先発の機会が与えられている。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

リバプールが苦戦した要因

南野拓実
【写真:Getty Images】

 リバプールは71.2%のボール保持率で終始ボールを回し続け、相手の倍を大きく上回る672本のパスを成功させた。しかし、最初の70分間で放ったシュートはわずか1本で、試合を通じても6本だけ。それでも最後の20分で2点を奪い、プレミア王者としての面目を保った。

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 開幕から無敗を継続していたリバプールをピンチに陥れたのがアストン・ビラだった。昨年11月の対戦でリバプールはトレゼゲのゴールでリードを奪われた。87分にアンドリュー・ロバートソンのゴールで追いつき、サディオ・マネのゴールでアディショナルタイムに逆転したが、あわやアストン・ビラの大金星という試合だった。

 この日の試合でもリバプールは苦戦している。苦しんだ要素はいくつかあって、1つ目は前節と同じ。カップ戦はすべて敗退しており、リーグ優勝が決まったことで、残り試合は完全な消化試合になった。前節では意地を見せるマンチェスター・シティに0-4と大敗したように、モチベーションの欠如は否定できない。

 この試合でもベンチスタートとなったキャプテンのジョーダン・ヘンダーソンは試合中に笑みを見せている。稀代のモチベーターであるユルゲン・クロップでも、タイトルがかかっていない試合で選手をモチベートするのは難しかった。

 クロップはもう一つ、試合を難しくさせた原因を明かしている。ピッチは時折強い風にさらされ、攻撃の起点になるロングボールは封じられた。さらに、アンフィールドのピッチは乾燥していて、グラウンダーのパスはスピードが出なかった。ボールを保持したところから攻撃を始めるリバプールにとっては厳しい条件だった。

3人の気が利く男たち

 試合は0-0のまま終盤に突入。しかし、交代で入ったリバプールの「気が利く男たち」がスコアを動かした。

 ベンチスタートだったヘンダーソン、ジョルジニオ・ワイナルドゥム、ロベルト・フィルミーノが61分に揃って投入された。サラーやトレント・アレクサンダー=アーノルドが強烈な個性で違いを生むのに対して、彼らは機転を利かせてチームに貢献する。彼らがいたのといないのでは、チームのパフォーマンスは雲泥の差だった。

 思い返せば、ヘンダーソンがハムストリングの負傷で離脱していたワトフォード戦で、リバプールは今季リーグ戦初黒星を喫した。フィルミーノ不在時のゴール欠乏症という課題をリバプールは抱えている。マネやサラー以上に彼らの存在は試合の結果に大きくかかわるのではないだろうか。

 先制シーンは中央に侵入したアレクサンダー=アーノルドから始まった。パスを受けたナビ・ケイタが左サイドからゴール前にパスを送ると、サディオ・マネがシュートを決めた。

 アレクサンダー=アーノルドが中央に切り込むシーンではワイナルドゥムが、ケイタがパスを出すシーンではフィルミーノが、相手のディフェンスを引き付けてスペースを作っている。2点目のシーンでもフィルミーノがDFラインを下げさせる動きをとったことで生まれたスペースで、フリーになったカーティス・ジョーンズがゴールを決めている。

南野拓実は適応に時間がかかる

 ジョーンズのゴールはプレミア初得点となった。U-9チームからリバプールのアカデミーに所属する19歳は、この試合の前日に新たな長期契約を結んだばかり。昨年1月のトップチームデビュー以降はU-23チームを主戦場としながら、FAカップやカラバオカップで出場機会を与えられていた。インサイドハーフや3トップの一角でもプレーできるジョーンズの台頭は、この試合で出場がなかった南野拓実と出場機会を争う相手になるだろう。

 リーグ戦再開後は控え選手にもチャンスが多く与えられており、南野は3試合に出場していた。この試合ではケイタ、ディボック・オリギ、アレックス・オックスレイド=チェンバレンが先発で起用されている。ケイタにはボールを運ぶ推進力があり、オックスレイド=チェンバレンには強烈なミドルシュートがある。神出鬼没なオリギにはゴールを奪う決定力がある。その個性がリバプールのアクセントになっている。

 リバプールでの南野は、ワイナルドゥムやフィルミーノのように機転を利かせるタイプに映る。どちらが重要な選手かという話ではなく、ピッチの中にはどちらもいなければいけない。過密日程という事情からヘンダーソンたちを休ませる必要があったが、ピッチ上には潤滑油が欠乏していた。オリギではなく南野が起用されていたら、試合は少し違った展開になっていたかもしれない。

 強烈な個性がない分、周囲との連携の構築には時間がかかる。マネとサラーが移籍後リーグ初戦でゴールを決めたのに対して、フィルミーノは10試合を必要とした。南野やフィルミーノのようなタイプの選手は適応に時間がかかることを承知する必要があるだろう。

 マンチェスター・ユナイテッドで27年間指揮を執ったサー・アレックス・ファーガソンはチームをバスに例え、「何が起きようと、君たちがいようといまいと、バスは進んでいく」と言った。リバプールは来季もタイトル獲得に向けた戦いを続けていくが、活躍できなかった者は去っていく。今季は残り5試合。ユナイテッドにおけるパク・チソンになれるかどうか、南野に与えられるチャンスは決して多くはない。

(文:加藤健一)

【了】

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