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南野拓実が批判を覆すには…。リバプールが主力活躍の裏で進める来季に向けた実験

プレミアリーグ第34節、ブライトン対リバプールが現地時間8日に行われ、1-3でリバプールが勝利している。敵陣でボールを奪って決めた序盤の2得点はリバプールらしさが凝縮されていた。主力選手の活躍が目立った一方で、来季に向けたテストも進められている。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

アイデンティティが染みついたゴール

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【写真:Getty Images】

 3-1で後半アディショナルタイムを迎えてもなお、リバプールの選手たちは点差など関係ないと言わんばかりに4点目を狙っている。チャンスを外したモハメド・サラーは、まるでUEFAチャンピオンズリーグでゴールを外したかのような表情を浮かべていた。

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 リバプールにとっては、残りのリーグ戦は消化試合でしかない。史上最速ペースでリーグ優勝を決め、カップ戦はすべて敗退。記録達成へのモチベーションはあるかもしれないが、選手をやりくりしながら試合を消化している。

 2-0で勝利したアストンビラ戦から中2日、リバプールは4人を変更してブライトン戦に臨んだ。5試合を残して降格圏と9ポイント差の「安全圏」にいるブライトンは、リーグ王者に真っ向から立ち向い、最終ラインから積極的にボールをつなごうとした。

 しかし、ブライトンのプランは早々に崩れた。

 後ろ向きでボールを受けたブライトンのセンターハーフ、ダフィ・プレッパーのトラップが大きくなったところをナビ・ケイタが奪った。ケイタが出したパスをロベルト・フィルミーノがスルーすると、サラーが左足でこれを決めた。

 わずか6分でリバプールは先制したが、さらにその2分後に追加点が生まれる。センターバックのアダム・ウェブスターが最終ラインから運ぼうとしたところをジョーダン・ヘンダーソンが寄せてナビ・ケイタが奪い、フィルミーノ、サラーとつないで最後はヘンダーソンがミドルシュートでゴールネットを揺らした。

 ともに相手のビルドアップの一瞬の隙をついて生まれたゴール。ハイプレスの鋭さや、トランジションの素早さは、優勝が決まっていても緩むことはない。彼らのアイデンティティが染みついた2つのゴールだった。

来季への布石

 前半に1点を返されたが、76分にアンドリュー・ロバートソンのCKをサラーが決めて再び2点差とした。先発を外れたファビーニョやロバートソンといった主力選手は後半からプレーし、5枚の交代枠を使い切って試合をクローズさせた。

 優勝が決まっているにもかかわらず、そこまで大胆なターンオーバーは見せていない。しかし、その中でも来季に向けた実験は行われている。

 この試合では19歳のネコ・ウィリアムスがリーグ戦で初めて先発で起用された。ただ、ポジションは本職の右サイドバックではなく、ロバートソンが務めている左サイドバック。試合終盤の短い時間ではプレーしたことがあったが、慣れないポジションでの先発起用は明らかにテストだった。

 結果的にはほろ苦い初先発となった。マッチアップした同い年のタリク・ランプティーに何度か突破を許し、イエローカードをもらってハーフタイムに退いている。ベテランのジェームズ・ミルナーや守備固めで起用されるジョー・ゴメスは左サイドバックでもプレーできるが、ロバートソンの控えを務められる本職の選手はいない。残りの試合はウィリアムスにとって生き残りをかけたチャンスとなるわけだ。

 予定された起用ではなかったと思うが、クリスタル・パレス戦の終盤には、ジョルジニオ・ワイナルドゥムもこのポジションで試された。ユルゲン・クロップは非常事態へ向けて布石を置いている。

加熱する控え組のサバイバル

 前十字靭帯損傷で今シーズンを全休したナサニエル・クラインは契約満了で退団。アダム・ララーナも今シーズン終了とともにチームを去る。アストンビラ戦でプレミア初ゴールを決めた19歳のカーティス・ジョーンズとは今夏に新たな長期契約を結び、17歳のハービー・エリオットともプロ契約を結んだ。彼らが来季もトップチームでプレーできるのか、U-23チームを主戦場にするのか、または他クラブへレンタルされるのか。残りのシーズンはその大きな指標となるに違いない。

 生き残りという意味では控え選手たちも変わらない。この試合で2度のボール奪取から2点につなげたケイタは、リーグ再開して以降は高いパフォーマンスを見せている。

 リーグ戦は残り4試合。この試合でアレックス・オックスレイド=チェンバレンが左ウイングで起用されたように、南野が置かれた立場は厳しい。ジェルダン・シャキリが怪我から復帰し、ディボック・オリギも控えている。南野の献身性やディフェンスで貢献できることはすでに知られているだけに、あとはゴールという結果を残すことができるかが、来季へ向けたアピールにつながるだろう。

(文:加藤健一)

【了】

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