やはりセビージャはEL最強だった。インテル逆転負けの理由とルカク&ラウタロを封じた策とは?【EL】

ヨーロッパリーグ(EL)決勝、セビージャ対インテルが現地時間21日に行われ、3-2でセビージャが勝利。前身のUEFAカップ時代も含め6度目の頂点に立った。一方、ロメル・ルカクのゴールで先手を取ったインテルだが、あと一歩及ばなかった。この日の敗因はどこにあったのだろうか。(文:小澤祐作)

2020年08月22日(Sat)11時34分配信

text by 小澤祐作 photo Getty Images
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激しい打ち合いの末、セビージャに歓喜

セビージャ
【写真:Getty Images】

 試合終了のホイッスルが鳴り響くと、セビージャのイレブンはバタバタとピッチに倒れ込み、フレン・ロペテギ監督は涙を流した。一方のインテルイレブンはがっくり肩を落とし、歓喜に沸くセビージャの戦士をただただ見つめるしかなかった。

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 現地時間21日に行われたヨーロッパリーグ(EL)決勝、セビージャ対インテルは、激しい打ち合いの末に3-2でセビージャが勝利。前身のUEFAカップ時代も含め、6度目の頂点に立った。

 決勝という舞台に相応しい、前半からかなり動きの多いゲームだった。インテルは3分にロメル・ルカクがジエゴ・カルロスに倒されPKを獲得。これを自ら沈め、チームに先制点をもたらしている。

 しかし、セビージャも食らいつく。12分に右サイドを崩し、最後はヘスス・ナバスのクロスに先発起用されたルーク・デ・ヨングがダイビングヘッド。すぐに同点に追いついた。そして、33分にもオランダの長身FWが得点。セットプレーを活かしてのものだった。

 前半のうちに逆転を許したインテルだったが、2失点目からわずか2分後、フリーキックをディエゴ・ゴディンが頭で合わせゴールゲット。またもスコアが振出しに戻った。

 お互いに譲らない展開が続く中、決勝ゴールが生まれたのは74分だった。セビージャがFKのチャンスを得ると、こぼれ球に反応したD・カルロスがオーバーヘッド。これがルカクに当たり、ゴールへ吸い込まれた。

 インテルは終盤、クリスティアン・エリクセンやアレクシス・サンチェスらを投入して反撃を試みたが、セビージャから3点目を奪うのは容易ではなかった。結果的にあと一歩及ばず、決勝の地で散ることになっている。

セビージャの狙い

 インテルは今季のELにおいて最多となる3失点を喫した。うち2失点はセットプレー、そして1失点は右サイドのクロスから。最前線にヘディングに強く、ゴールへの嗅覚も兼ね備えるデ・ヨングを起用したロペテギ監督の采配にやられてしまう結果となった。

 ただ、それが敗北のすべての原因ではない。90分間を振り返ると、セビージャがインテルに対し明確な攻撃の狙いを持って挑んでいたことが分かる。

 キーワードは「サイドチェンジ」だ。ローマ戦やマンチェスター・ユナイテッド戦ではより縦への鋭い攻めが光っていた印象が強いセビージャだが、この日は横に長いボールを多く取り入れていた。それを受けたインテルは左右に大きく揺さぶられ、思ったような守備を披露することが叶わなかったのだ。

 セビージャがボールを保持すると、インテルは両ウイングバックが下がって5バックの陣形を組む。各縦レーンが埋められるため、ここを崩すのはどのチームにとっても容易ではない。

 しかし、セビージャは右から左、左から右にボールを動かすことでインテル守備陣全体をスライドさせた。とくに、内側から外側に移動しなければならないインテルのWBはどうしてもボールに間に合わない。セビージャはそこにサイドバックとウイングの選手を当てることで、瞬間的な数的優位を作り出した。

 12分の同点弾の場面は、まさにそうした狙いが的中したと言えるだろう。セビージャが右にボールを流すと、左WGのアシュリー・ヤングが外につり出される。そうしてCBとの間にギャップが生まれると、今度はそこへジョアン・ジョルダンが侵入。彼の下へボールを当て、再び外にパスを流しA・ヤングを反復移動させたことで、J・ナバスがフリーとなってクロスを上げることができた。

 インテルはこうした相手の狙いにかなり苦戦した。無理して飛び出し、ファウルを犯すことも多かったのは事実だ。

 また、今季限りでセビージャを去るエベル・バネガの存在も厄介だった。彼が左右両サイドを繋ぐフリーマン的な役割を担っており、円滑にボールを動かし続けていたからだ。捕まえようとしても、巧みなボールコントロールと強靭なフィジカルを活かして確実にキープ。抜群に目立っていたかと言えば決してそうではないかもしれないが、非常に効果的な働きを見せていた。

抑え込まれた強力2トップ

 インテルはこの日、合計9本のシュートを放っている。堅守を誇るセビージャから複数得点を奪ったのは流石というべきだろう。しかし、90分間全体でみると、とくにルカクとラウタロ・マルティネスの強力2トップの見せ場は少なかったようにも感じる。

 ルカクは電光石火の一撃を沈めた。対峙したD・カルロスを上回るスピード、そして巧みな身体の使い方。彼の持つ武器が前面に出たからこそ奪えたPKであった。

 ただ、持ち味であるポストプレーが活きたシーンはほんの数回。中盤に下がってもD・カルロスが中盤の選手にマークを渡すことなく付いてくるので、一切の自由を与えてもらえなかった。その中で1点を奪ったのは見事という他ないが、やはりセビージャ相手に「無双」することは叶わなかった。

 L・マルティネスはさらに存在感が消えていた。マンマークに付いてくるジュル・クンデの対応に手を焼いていたのは明らかで、シュート数は0本、タッチ数は両チームのスタメン組で最低となる22回に終わっている。FWとしてはやはり物足りない出来と言わざるを得ない。

 もちろんだが、彼ら二人に責任を押し付けるのは酷だ。セビージャの守備対応も見事で、インテルはビルドアップにかなり苦労した。それが必然的に2トップの勢いを消すことにもつながっている。

 とくに左のアレッサンドロ・バストーニとロベルト・ガリアルディーニの場所でパスが寸断される場面が多かった印象だ。セビージャのハイプレスがキツく、サイドあるいはバックパスが増え、苦し紛れのロングフィードに逃げることも少なくなかった。ボールは動かすが、なかなか前進できなかったと言えるだろう。

 ボールを休まず動かしながら鋭い縦パスを織り交ぜ2トップを活かしたいところだったが、セビージャCBの抜け目のないマンマーク対応、そしてビルドアップを遮断されるハイプレス。インテルは相手の対策に飲み込まれてしまう結果となった。

この経験は重要。勝負は来季だが…

アントニオ・コンテ
【写真:Getty Images】

 2-3と逆転負けを喫したインテルだが、EL準優勝はもちろん立派な成績である。セビージャにとっても簡単な相手でなかったことは、ゲーム内容を見ても明らかだった。

 コンテ監督1年目のインテルは、非常にタフなシーズンを送ったと言える。チャンピオンズリーグ(CL)ではバルセロナやボルシア・ドルトムントと同居する、いわゆる「死の組」を戦い抜いた。そして、リーグ戦は新型コロナウイルス感染拡大による中断明け以降過密日程が続いたが、最後の力を振り絞ってユベントスに次ぐ2位につけている。

 選手の身体には間違いなく大きな負担がのしかかっている。実際、けが人も少なくなかった。しかし、今季も無冠とはなったが、前例のない異様なシーズンの中で就任1年目のコンテ監督は十分な結果を残したと言えるだろう。その手腕は見事と言わざるを得ない。

 また、バストーニ、ニコロ・バレッラ、L・マルティネスら若い選手がCL、そしてEL決勝の舞台を経験できたのは、間違いなく今後につながる。コンテ監督も試合後に「選手たちは未来へ向けて多くの経験を得られたはずさ」と話している。来季はここにアシュラフ・ハキミが加わることもあり、今後が本当に楽しみなチームだ。

 ただ、一部報道によるとコンテ監督が辞任する可能性も否めないという。スティーブン・チャン会長が「コンテと彼のテクニカルスタッフは最高の仕事をしている」と話している通り、フロントからの信頼は厚いようだが、指揮官自身がプライベートにも影響を及ぼしている問題に関しての改善を求めているようだ。

 ジュゼッペ・マロッタCEOはすでにマッシミリアーノ・アッレグリ氏を新指揮官候補としてピックアップしているという報道もあるが、果たしてどうなるか。「今はミラノに戻らないといけない。数時間は休み、冷静な頭で面会する」とコンテ監督は発言しているので、今後数日はインテルの動きに注目したい。

(文:小澤祐作)

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【了】

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