ちょっぴり天然なヴェンゲルと恐怖のファーガソン。アーセナルとマンUのボスはどう違った?【ヴェンゲルVSファーガソンの20年史 後編】

アーセナルを特集した好評発売中の『フットボール批評issue29』から、プレミアリーグの2大巨頭、アルセーヌ・ヴェンゲルとアレックス・ファーガソンの舌戦をヴェンゲル愛を持って読み解いたキムラヤスコ氏の「ヴェンゲルVSファーガソンの20年史」を一部抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(文:キムラヤスコ)

2020年09月10日(Thu)10時10分配信

text by キムラヤスコ photo Getty Images
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対メディア─何のための会見か?

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【写真:Getty Images】

 ヴェンゲルのメディアに対しての物言いは基本的に知的で穏やか。ユーモアのセンスもあって気の利いた発言も多い。冒頭に挙げた「パスポートで選手を選んではいない」発言にしても、受け取り方はさまざまだろうが記憶に残る名言だ。記者をクスッと笑わせたり、「見出しに使える」ワードを供給したり、何かとサービス精神に溢れていたともいえる。
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 対するファーガソンの記者会見はいつも緊張感に満ちていた。うっかり選手の問題発言のことなど聞こうものなら、間髪入れずに所属メディアと名前を確認され、即日出禁も当たり前。そうやってメディアに対して主導権を握り、発信内容をコントロールする様子がいかにも高圧的で私はイヤだったけれど、発言で心理作戦をしかけるのも計算のうちであり、「チームの弱点を晒さない」という意味でも完璧と認めざるを得ない。

「大切なのは試合に勝つことであり、会見で気の利いた答えをすることではない」という言葉もごもっとも。その言葉には、とても魅力的だがやや脇の甘いヴェンゲルへのちょっとした棘を感じてしまうのだけども……。

 また発言といえば、ヴェンゲルとファーガソンの違いを感じる典型的な話がある。ヴェンゲルは、自軍の選手のラフプレーが問題になり、記者に意見を求められると、「私は見ていなかった」と言うのがお決まりで、ファンですら「またか」と失笑するほどだった。

 一方、同じシチュエーションでファーガソンは「見直しておくよ」と答えていたらしい。「そう言っておけば反感を買うことなく、どうせそのうち他のニュースに紛れて忘れられる」という計算があったそうで、ここでも権謀術数に長けたファーガソンに対し、スマートなはずがちょっと天然なヴェンゲルという図式が際立ってしまう。

(文:キムラヤスコ)

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『フットボール批評issue29』


定価:本体1500円+税

≪書籍概要≫
なぜ、あえて今アーセナルなのか。
あるアーセナル狂の英国人が「今すぐにでも隣からモウリーニョを呼んで守備を整理しろ」と大真面目に叫ぶほど、クラブは低迷期を迎えているにもかかわらず、である。
そのヒントはそれこそ、今に凝縮されている。
感染症を抑えながら経済を回す。世界は今、そんな無理難題に挑んでいる。
同じくアーセナル、特にアルセーヌ・ベンゲル時代のアーセナルは、一部から「うぶすぎる」と揶揄されながら、内容と結果を執拗に追い求めてきた。
そういった意味ではベンゲルが作り上げたアーセナルと今の世界は大いにリンクする。
ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。

“新アーセナル様式”の今後を追う。

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【了】

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