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ヴァーディーがマンCを粉砕。33歳になっても進化止まらず…レスターを5点快勝に導く大活躍

プレミアリーグ第3節が現地27日に行われ、マンチェスター ・シティはレスターに2-5で敗れた。ペップ・グアルディオラ監督にとっても指導者キャリア初の5失点大敗。しかも3本のPKを与える散々な内容だった。この試合で違いとなったのは、レスターをけん引するベテランストライカーだった。(文:舩木渉)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

ペップ落胆。初の5失点大敗

ジェイミー・ヴァーディー
【写真:Getty Images】

 マンチェスター・シティが5失点して敗れるのは、ペップ・グアルディオラ監督が就任してから初めてのことだ。

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 指揮官本人にとっても監督キャリア686試合目で初めての屈辱だった。現地27日に行われたプレミアリーグ第3節のレスター戦を、シティは2-5で落とした。

「攻撃面に問題があった。同じような守り方の相手に対し、このような問題は何度も起こってきた」

 グアルディオラ監督は、試合後の記者会見の中でそう嘆いた。

 試合の出だしは悪くなかった。開始4分でリヤド・マフレズが古巣相手にゴールネットを揺らしてシティに先制点をもたらし、普段とは違う5-4-1の布陣で構えるレスターをボール支配率でも大きく上回った。

 ところが、これはレスター側の思う壺でもあった。ブレンダン・ロジャース監督はシティ戦用にシステム変更を施し、5人のDFと4人のMFで堅牢な2ラインを形成。5-4の間を限りなく狭くすることでシティの選手たちが入り込むスペースを消し、ボールを守備ブロックの外側で回させることに成功していた。

 ただ、5バックのライン設定を下げすぎないことも意識されていた。できるだけ我慢して9人のブロックの中でボールを絡め取り、カウンターで反撃を狙うのがレスターが用意していたプランだった。

 そして37分にロジャース監督の計画が実る。カウンターで飛び出し、相手ペナルティエリア内まで侵入したFWジェイミー・ヴァーディーが、シティのDFカイル・ウォーカーに倒されてPK獲得。それをヴァーディー自らが豪快に決めて同点に追いついた。

 後半に入るとシティは早い段階で攻撃的な交代カードを切ったが、むしろ状況は悪化しているように見えた。守備面の脆さが露呈し、さらに2本のPKを与えるなど4失点。ディフェンスラインの連係の拙さ、ボールを失った後のプレッシングの甘さなど、指揮官が訴える「攻撃面の問題」よりも守備の機能不全がチームをナーバスにさせてしまっていた。

ヴァーディーがハットトリック

 この試合でレスターの勝利の立役者となったのは、間違いなくヴァーディーだ。自ら勝ち取ったPK2本に加え、DFティモシー・カスターニュの折り返しにGKの手前で合わせる絶妙なフィニッシュも披露してハットトリックを達成。33歳になっても健在であることを証明して見せた。

 前半から守備面での貢献も光った。守備ブロックからやや外れ、5-4-1の頂点に立っていたヴァーディーは、シティの中盤における起点を確実に潰した。常にロドリのそばに立ってパスコースを限定し、相手の攻撃の組み立てを阻害することができていた。

 試合後、テレビのインタビュースポットに立ったベテランストライカーは「僕たちにはゲームプランがあり、パフォーマンスを見れば、やりたいことが完璧に機能していたと思う」と5得点を奪っての快勝を誇った。

 その「ゲームプラン」と自身に与えられていた役割についても、ヴァーディーは的確な言葉で表現する。

「このような試合では望むほどボールを持てないので、僕たちは(ブロックを)少し深くに設定した。僕はロドリを苛立たせるためのポジショニングを取っていた。彼にボールを持たせても何もさせなかったと思う。そして、ボールを奪ったら数回パスをつないで相手のプレスを突破し、まっすぐ彼らのディフェンスラインへと向かう。戦術的には完璧なプレーができていたと思う」

 85分までの出場でわずかに「21タッチ」、2度のPK獲得、シュートはPK2本を含めて「3本」で3得点。33歳になった2020年のヴァーディーは、円熟味を増し、かつストライカーとして進化を続けている。

 レスターがプレミアリーグ制覇を成し遂げた2015/16シーズン、強烈なロングカウンターの先鋒として圧倒的なスピードを武器にまばゆい輝きを放った。あの頃から監督も戦術も変わり、自身の爆発的な加速も全盛期ほどではなくなっているにもかかわらず、2019/20シーズンに初めてプレミアリーグ得点王を獲得したことからも、成熟と成長がよくわかる。

 英『スカイ・スポーツ』によれば、ヴァーディーの1試合平均のタッチ数は2015/16シーズンを頂点に年々減少傾向にあったという。

 2015/16シーズンは1試合あたり「31.44回」だったものが、2016/17シーズンは「24.91回」、そこから「22.76回」→「22.26回」→「22.63回」と横ばいになり、今季に至っては現時点で「19.3回」まで落ち込んでいる。

33歳、止まらない成長

ジェイミー・ヴァーディー
【写真:Getty Images】

 それでも昨季は2015/16シーズンに比べて1つ減っただけの23得点を奪い、リーグ得点王に。今季は3節終了時点ですでに5得点と、過去最高のペースでゴールを積み重ねている。ボールに触る回数が減れば、必然的にシュートチャンスの数も少なくなるはずだが、その中でより確実にゴールネットを揺らすかを突き詰め続けているのがヴァーディーというストライカーなのだ。

 彼曰く「僕は常に成長し続けたい。自分が何歳かなんて関係ない。毎日成長を続けていたいし、練習場でもずっとそう望み続けている」のである。

 元マンチェスター・ユナイテッドのレジェンドで、現在は『スカイ・スポーツ』の解説者を務めるガリー・ネヴィル氏もヴァーディーの充実ぶりに舌を巻く。

「かつての彼は試合中に100回走って、成功するのは2回くらいだった。でも、今は1試合に10回走って、8回くらいは成功させている。はるかに効率的になった。彼がトップレベルに出てきたばかりの頃は荒削りで攻撃的だったね。プレミアリーグでノンリーグ(アマチュアの下部リーグ)の選手のようにプレーするんだ。今では彼のプレーはより洗練され、スムーズに、そして繊細になった」

 レスターにとって開幕3連勝はクラブ史上初の快挙だった。プレミアリーグ制覇を成し遂げた2015/16シーズンは開幕から3試合で2勝1分だったので、すでに当時以上の勢いを得ていると言える。

 その快進撃を先頭に立って引っ張り、シティ相手の大勝を実現する立役者となったのがヴァーディーだった。ロドリのマンマークという守備タスクを完璧にやり遂げ、ボールに触る回数が少なくとも、ゴール前で高いクオリティを発揮する。

 ワンタッチでGKを出し抜くシュートを決めるためのランニングをするのか、相手DFの前にいち早く体を入れて有利な状態を作り出した上でPKを誘うのか、あるいは味方を活かすためのスペースを作るのか。ボールに触っていなくとも、状況に応じてゴールを奪うために何が最善かを常に考え、実行していた。

 8部リーグからのしあがってプレミアリーグの頂点やイングランド代表まで上り詰めた、叩き上げストライカーはベテランになっても成長への歩みを止めることはない。

(文:舩木渉)

【了】

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