冨安健洋はまさに壁。最高の現代型CB、またも際立つパフォーマンス。その安定感はセリエAトップクラス

セリエA第3節、ベネベント対ボローニャが現地時間4日に行われ、1-0でホームチームが勝利している。日本代表DFの冨安健洋はこの日も先発フル出場。チームとしては残念ながら敗れてしまったが、21歳の個人パフォーマンスはかなり際立っていたと言えるだろう。(文:小澤祐作)

2020年10月05日(Mon)11時03分配信

text by 小澤祐作 photo Getty Images
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怒涛のシュートラッシュも1点が遠く…

冨安健洋
【写真:Getty Images】

 セリエA第3節のベネベント対ボローニャは、サッカーの面白さと恐ろしさが詰まった、そんなゲームとなった。

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 立ち上がりから攻撃的な姿勢をみせていたのは、シニシャ・ミハイロビッチ監督率いるチームだ。最終ラインからしっかりとボールを繋ぎ、サイドに人数を集めたところで大きく反対側へパスを展開。そこで1対1、あるいは数的優位な状況を作り出しては、深い位置でアクションを起こした。

 27分にはマティアス・スバンベリのパスに抜け出したムサ・バロウがGKと1対1に。さらに40分には、ロベルト・ソリアーノのスルーパスを受けたアンドレアス・スコフ・オルセンが再びGKと1対1を迎えるなど、ボローニャは前半から多くのビッグチャンスを生み出している。いつ点が生まれてもおかしくはなかった。

 一方のベネベントはほぼ自陣内でのプレーを強いられた。GKモンティポ・ロレンツォのファインセーブもありスコアこそ0-0だったが、ファーストシュートに持ち込むまで40分もの時間を費やすなど、かなり状況は厳しかった。

 後半に入っても攻めるボローニャ、守るベネベントという構図に大きな変化はなく。56分には右サイドを突破したバロウから最後はスコフ・オルセンにビッグチャンスが生まれたが、これを再びベネベント守護神が防いでいる。

 そんな中、先制点を奪ったのは押し込まれていたベネベントだった。コーナーキックから、最後はジャンルカ・ラパドゥーラが身体を倒しながらシュート。あまりに大きすぎる1点であった。

 決定機を逃し続けズルズルと時間が進み、ほんの一瞬で先制点を奪われる。サッカーにはありがちな展開だ。リードを許したミハイロビッチ監督はその後、リッカルド・オルソリーニらを投入し反撃に出たが、最後までベネベントの守備陣を攻略するには至らなかった。

 データサイト『Who Scored』によると、ボローニャはこの日実に17本ものシュートを放っていたという。対してフィリッポ・インザーギ監督率いるベネベントはシュート数7本。枠内に飛んだのはそのうちのわずか2本だ。支配率も40%と、ボローニャを大きく下回っている。

「勝利に値する試合だったが、GKとの1対1で4つのミスを犯し、セットプレーで失点してしまった。選手たちを責めることはできない。ただ得点できなかっただけだ」。

 試合後、ミハイロビッチ監督はこのようなコメントを残した。「ただ得点できなかっただけ」。ベネベント戦はこの言葉に尽きるだろう。ボローニャは勝てる試合…いや、勝つべき試合でポイントを落としてしまったと言える。

安定の冨安健洋

 さて、この試合でボローニャの冨安健洋はまたもフル出場を果たした。チームとして攻める時間帯が多かったが、それでも集中力を一切失うことなく、後半途中からは3バックの右も務めるなど安定感抜群のプレーを発揮している。

 まず目を見張ったのがビルドアップでの貢献度だ。これまでも正確なパスを通してきた冨安だが、それはこのベネベント戦でも健在。危険なパスを選択することなくフリーとなっている選手を確実に使い、コースがなければ少し持ち運んで自らパスの選択肢を増やした。利き足はご存じの通り右だが、左足でも精度の高いロングフィードを敵陣内へ通している。

 肝心な守備面でも輝きを放った。冨安は判断力に長けており、常に的確かつ冷静なプレーで最終ラインを引き締めることができる。前節同様、不用意な飛び出しや軽率な対応がまったくないという安定感は、セリエAでもトップクラスのものがあると言える。

 38分の場面ではベネベントにロングフィードを放り込まれ、左サイドバックのアーロン・ヒッキーの裏にボールが落ちたが、冨安が確実にカバー。前節セリエAデビューを果たしたばかりのレフティーへのサポートは、この日も抜群に光っていた。

 前半ATには連続してチームを救った。45分、中央でボールを持ったイアゴ・ファルケが身体を左右に揺さぶりながらドリブルしたが、対峙した冨安はしっかりと腰を落としてリトリート。ファルケがシュートモーションに入った瞬間素早く寄せ、フィニッシュをブロックしている。

 さらに47分、ボローニャはペルパリム・ヘテマイに左サイドからクロスを放り込まれる。ボールはGKウカシュ・スコルプスキの頭上を越えたが、そこを冨安がカバー。頭でボールを弾いた。その直後、味方が自陣ペナルティーエリア内でボールをロストしたが、冨安が素早くポジショニングし、右足を出してシュートを弾いている。まさに、壁だった。

 56分には相手のクリアボールが冨安の背後に通り、ラパドゥーラに先にランニングを許したが、日本代表DFは抜群のスプリント力を活かしてイタリア人FWよりも先にボールに触れている。もはや冨安自身が攻略される気配はなかった。

 さらに冨安は、自陣でマルセイユルーレットも披露。前節のドリブルでの前進と同様、DFらしからぬプレーも平然としてやってのけるのが、この男の魅力の一つと言えるのかもしれない。

 データサイト『Who Scored』によると、冨安はこの日57本のパスを繰り出し、そのうちの49本を成功。これはともにチームトップの成績だ。さらに、キーパス1本、ドリブル成功数1回、被ドリブル突破数0回、空中戦勝利数2回と十分な数字を残している。

 冨安の評価は着実に上がっており、ここ最近ではミランへの移籍も噂された。ボローニャ側が要求した2500万ユーロ(約30億8500万円)が高額すぎるという理由でミランは獲得から撤退したようだが、日本代表DFの価値はこれからもどんどん上昇するだろう。その期待感を抱くほど、21歳のパフォーマンスは際立っている。

 対人戦に強く、クレバーで、速さもあり、ビルドアップも正確。冨安は最高の現代型センターバックと言えるだろう。数年後、ビッグクラブが争奪戦を繰り広げるような選手になっても、なんら不思議ではない。

(文:小澤祐作)

【了】

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