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リバプールの守備はなぜ崩壊? 7失点で批判されるべきは…。開幕戦から続く致命的な問題

プレミアリーグ第4節、アストン・ビラ対リバプールが現地時間4日に行われ、アストン・ビラが7-2で大勝を収めた。チェルシーからロス・バークリーを加えたアストン・ビラは開幕から3連勝。一方で、歴史的な惨敗を喫したリバプールはどこに問題があったのだろうか。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

歴史的惨敗

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【写真:Getty Images】

 ユルゲン・クロップも笑うしかなかった。リバプールが公式戦で7失点を喫したのは、1963年4月以来だという。30年ぶりのリーグ戦タイトルや本拠地アンフィールドでの無敗記録など、クロップ率いるリバプールは数々の歴史を作り上げてきたが、ここに不名誉な記録が1つ加わった。

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 アストン・ビラは相手の連係ミスから4分に先制すると、オリー・ワトキンスが39分までにハットトリックを達成した。前半の4得点だけでは飽きたらず、後半にも3点を追加。チェルシーから期限付き移籍で加わり、この試合がデビュー戦となったロス・バークリーは前半に決定機を何度か外したものの、好調なチームの波に乗る形で55分にゴールを決めている。

 1つや2つのミスでは惨敗は起きない。2シーズン前の失点の約1/3を1試合で喫したのだから、それなりの原因がいくつも重なって起きたことは明白だ。開幕から好調のアストン・ビラのパフォーマンスが良かったことは大前提として、リバプールは多くの問題を露呈した。

アリソン不在の影響

 チーム状況で言えば、リバプールは少なくない離脱者を抱えている。筋肉系のトラブルを抱えていたジョーダン・ヘンダーソンは試合の2日前から練習に合流し、この試合のベンチに入ったが、サディオ・マネとアリソン・ベッカーが欠場した。

 マネは2日前に新型コロナウイルスの陽性反応が出たため、無症状ではあるものの隔離生活を強いられている。アリソンは前日の練習でチームメイトと接触した際に肩を負傷。6週間の離脱が予想されている。

 アリソンの代役として起用されたアドリアンは、昨季もアリソンが離脱した際に穴を埋める活躍を見せている。この試合の7失点はGKにとってほとんどノーチャンスで、4度のセーブがなければさらに多くの失点を喫していただろう。

 しかし、開始早々のミスは試合の流れに大きな影響を与えた。キックオフと同時に激しいプレッシャーをかけて主導権を握ったアストン・ビラに対し、アドリアンはボールを繋いで試合をコントロールしようとしたが、ジョー・ゴメスへのパスが合わなかった。

 シュートストップは安定感があるものの、アドリアンは失点につながるミスが多い。リバプール加入後、プレミアリーグ12試合で失点につながるミスはこれで3つ目。ウェストハム時代は125試合で7つだったことを考えても多すぎる。

連鎖するDFのミス

 1点目でアドリアンとの連係ミスを犯したジョー・ゴメスはその後も不安定なプレーが続き、61分にピッチから退いている。2点目はワトキンスに寄せきれず、5点目は自身のパスが奪われたところから失点を喫している。

 リーズ戦ではフィルジル・ファン・ダイク、アーセナル戦ではアンドリュー・ロバートソンのトラップミスから失点を喫している。判断のミスか、技術のミスか。いずれにせよ、ディフェンシブサードでのミスは失点に直結するだけに、これだけ連続してしまえば失点禍は避けられない。

 リバプールは元々DFラインを高く設定しているチームだが、今季はこれまでに増してDFラインが高い。すると、DFラインの裏を取られるシーンは必然的に増える。リーズ戦では1本のパスで裏を取られ、アーセナル戦ではビルドアップからゴール前に侵入されてゴールを許した。この試合でも2点目と7点目はトレント・アレクサンダー=アーノルドの裏を取られたところから生まれている。

 しかし、ハイラインは今に始まったことではなく、これまでは対処できていた。ジョー・ゴメスとフィルジル・ファン・ダイクのスピードと対人能力でピンチを防ぎ、アリソンが広大なスペースをカバーしていた。しかし、この日はそれも機能せず、やすやすとボックス内に侵入を許してしまった。

 シュートに対する寄せの甘さも失点を重ねた理由の1つ。この試合ではリフレクションでコースが変わったことで生まれた失点が3つもあった。6点目のシーンはアクシデンタルな部分があるが、ボールホルダーへのプレスが一瞬遅れたことでミドルシュートを打つ時間を与えている。攻守の切り替えも遅く、ボールを奪われたときの即時奪回がまったくと言っていいほど機能していなかった。

響いたキャプテンの不在

 プレッシングが徹底されず、トランジションでも劣勢だった。生命線とも言えるこの2つで劣っていたリバプールが失点を重ねたのは必然に近い。

 様々な問題が重なって悲劇は起きたが、悪い流れを断つリーダーが不在だったことも大きい。チームはヘンダーソンが離脱した際に不安定になることが多く、昨季のプレミアリーグでは3敗中2敗はヘンダーソンが欠場した試合だった。リーダーを欠いたリバプールの手綱は90分間緩みっぱなしだった。

 失点の原因はアドリアンのミスであり、ゴメスのミスであり、プレスの緩さだが、大敗の原因はチーム全体のものだ。糾弾されるべきはチームであって個人ではない。毎試合のようにミスから失点しているのは、個人のミスがチームに共有されていない証左ともいえる。

 リーグ戦はインターナショナルマッチを挟んで2週間後に再開される。惨敗のショックを2週間引きずると考えることもできるし、国際試合で切り替えられると捉えることもできる。対戦相手となるエバートンは4連勝で首位に立っている。この試合で見せた問題点がどこまで解決しているかを確かめるには不足のない相手だ。

(文:加藤健一)

【了】

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