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マンCはSランク陥落ながら…。大金費やし弱点カバー&若手獲得で覚醒なら悲願達成も【欧州主要クラブ補強診断(5)】

欧州の2020/21シーズンが開幕し、夏の移籍市場が終了した。この夏も各チームで様々な移籍があったが、各国の主要クラブはそれぞれどんな動きを見せたのだろうか。今回は昨季のプレミアリーグを2位で終えたマンチェスター・シティの補強動向を読み解く。

シリーズ:20/21欧州主要クラブ補強診断 text by 編集部 photo by Getty Images

穴を的確に埋め目標達成へ

マンチェスター・シティ
【写真:Getty Images】

 衝撃的なニュースが飛び込んできたのは今年2月のことだった。欧州サッカー連盟(UEFA)は重大なファイナンシャル・フェア・プレー(FFP)違反があったとして、マンチェスター・シティに2年間の主催大会出場の禁止と罰金の処分を言い渡したのだ。これにより、複数の主力選手に退団の噂が浮上するなど、クラブは大きく揺れていたのである。

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 しかし、シティはこの危機的状況を脱した。クラブは処分を不服としてスポーツ仲裁裁判所(CAS)に処分撤回を求めると、その異議申し立ては受け入れられ、UEFA主催大会への出場禁止処分は撤回、罰金は1000万ユーロ(約12億円)に減額。ほぼ「無罪」を勝ち取ったのだ。

 この結果により、プレミアリーグでの覇権奪回とチャンピオンズリーグ(CL)優勝を目標とするシティは今夏の移籍市場でも「いつも通り」動くことができた。

 今夏の補強第1号は、スペイン代表の未来を担うであろう逸材フェラン・トーレスだった。スピードを活かしたドリブルが最大の武器で、パスを呼び込むオフ・ザ・ボールの質も極めて高く、左右両サイドでレベルの高いパフォーマンスを発揮できるウインガーだ。リヤド・マフレズやラヒーム・スターリングらがいる中でファーストチョイスに躍り出ることは難しいかもしれないが、前線の層や将来性を考えても十分な戦力補強となった。

 さらにボーンマスからはオランダ代表DFのナタン・アケを獲得。身長180cmとそこまで大柄なタイプではないが、身体能力が高く足元の技術も水準以上、さらに複数ポジションをこなす万能型だ。ボーンマスではセンターバックがメインだったが、シティではバンジャマン・メンディやオレクサンドル・ジンチェンコでは心許ない左サイドバック起用が増えるだろう。

 そして、シティ最大の補強ポイントとなっていたエメリック・ラポルトの相棒には、クラブ史上最高額でルベン・ディアスを確保。スピード不足は否めないが、対人戦に強く読みの鋭さも秀逸で、ビルドアップ能力も非凡というジョゼップ・グアルディオラ監督好みのCBと言える。移籍金がかなり膨れ上がった点は否めないが、23歳という年齢を考えても魅力的な補強となったのは確かだ。

 中盤には即戦力級選手を加えなかったが、もともとここにはロドリやフェルナンジーニョ、ケビン・デ・ブルイネにイルカイ・ギュンドアン、フィル・フォーデン、ベルナルド・シウバがいる。厚みは申し分ないと言えるだろう。

 セルヒオ・アグエロが怪我がちなセンターフォワードに若干の不安があるとはいえ、スカッドの「質」と「量」はやはり世界トップレベル。昨季安定感を欠いたディフェンスラインに実力者を二人加えることができたことも、大きなプラスになることだろう。あとは、新戦力がどれだけ早くペップ・スタイルにフィットできるかが重要となってきそうだ。

 2020/21シーズンをもっての退任が噂されるグアルディオラ監督にとって、今季は言わずもがな勝負の年となる。ビッグイヤー獲得の期待が持てるほどの人材は揃っているが、それを結果に繋げることができるだろうか。

補強・総合力評価

マンチェスター・シティ
マンチェスター・シティの20/21シーズン予想布陣(黄色は新加入選手)

IN
GK:ザック・ステファン(デュッセルドルフ/期限付き移籍期間満了)
DF:ナタン・アケ(ボーンマス)
DF:ルベン・ディアス(ベンフィカ)
DF:ヤン・コウト(コリチーバ)
DF:フィリップ・サンドレル(アンデルレヒト/期限付き移籍期間満了)
DF:イッサ・カボレ(メヘレン)
FW:フェラン・トーレス(バレンシア)
FW:パブロ・モレノ(ユベントスU-19)
FW:ナウエル・ブストス(タジェレス)

OUT
GK:クラウディオ・ブラーボ(ベティス)
GK:アリヤネット・ムリッチ(ジローナ/期限付き移籍)
DF:ニコラス・オタメンディ(ベンフィカ)
DF:トシン・アダラビオヨ(フラム)
DF:ヤン・コウト(ジローナ/期限付き移籍)
DF:イッサ・カボレ(メヘレン/期限付き移籍)
DF:ペドロ・ポロ(スポルティングCP/期限付き移籍)
DF:板倉滉(フローニンヘン/期限付き移籍)
MF:アレイクス・ガルシア(ジローナ)
MF:ダビド・シルバ(レアル・ソシエダ)
MF:ルカ・イリッチ(トゥエンテ/期限付き移籍)
MF:アンテ・パラヴェルサ(ヘタフェ/期限付き移籍)
MF:食野亮太郎(リオ・アヴェ/期限付き移籍)
FW:レロイ・ザネ(バイエルン・ミュンヘン)
FW:パブロ・モレノ(ジローナ/期限付き移籍)
FW:ナウエル・ブストス(ジローナ/期限付き移籍)
FW:パトリック・ロバーツ(ミドルスブラ/期限付き移籍)
FW:マルロス・モレノ(ロンメル/期限付き移籍)
FW:ジャック・ハリソン(リーズ・ユナイテッド/期限付き移籍)
FW:ダニエル・アルザニ(ユトレヒト/期限付き移籍)

補強評価:A
昨季の課題となっていたディフェンスラインの脆さを改善すべく、アケとR・ディアスの両者を補強できたのは大きい。前線にもF・トーレスという実力者を加えることができた。この3人にかなりの金額を費やした点は否めないが、アケ(25歳)、R・ディアス(23歳)、F・トーレス(20歳)と将来性を考えても満足いく夏になったと言えるのではないか。

総合評価:A
ダビド・シルバやレロイ・ザネが退団。怪我人の多さやオフ期間の短さなどが影響してプレミアリーグ3試合で1勝1分1敗とスタートダッシュに失敗したものの、各ポジションの人材はやはり豪華だ。以前のような圧倒的な強さはないかもしれないが、新加入選手がペップ・スタイルにしっかりと適応できれば、悲願であるビッグイヤー獲得に手が届くかもしれない。

【了】

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