アーセナルは赤子扱いだが…マンCは成熟か退化か。師弟対決完勝も、グアルディオラが放棄したもの

プレミアリーグ第5節、マンチェスター・シティ対アーセナルが現地時間17日に行われ、1-0でシティが勝利した。シティは前半、圧倒的なボール保持率で攻め続けたが、後半は相手にボールを持たせる時間も長かった。ペップ・グアルディオラ監督が就任して5年目を迎えたシティは過渡期に入っているのかもしれない。(文:本田千尋)

2020年10月18日(Sun)12時05分配信

text by 編集部 photo Getty Images
Tags: , , , , , , , , , , ,

弟子に見せつけた師匠の貫禄

1018Guardiola_getty
【写真:Getty Images】

 師匠が弟子を赤子のようにあしらった。10月17日に行われたプレミアリーグ第5節、マンチェスター・シティ対アーセナル。ペップ・グアルディオラ対ミケル・アルテタの“師弟対決”として注目を集めた一戦は、終わってみればシティが1-0で完勝した。試合後のコメントによれば、ペップは「タイトで難しいゲームになる」と予想していたそうだが、これといった波乱は起きなかった。

【今シーズンのシティの試合はDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】


 見せつけた偉大なる師匠の貫録――。特に前半は、実にペップらしい試合運びだった。ロドリを軸にショートパスでポゼッションを高めつつ、中盤でボールを受けたラヒム・スターリング、ベルナルド・シウバが前方に仕掛けていく。結局アーセナルは、このピッチを広くフラフラする2人のウインガーを、最後の最後まで捕まえることができなかった。

 17分過ぎに64%のポゼッションを達成すると、23分にスターリングが先制に成功。そして35分頃までの10分間に至っては、ペップ・シティのボール支配率は86%にも達する。まるでペップがアルテタに実戦でレッスンをしているかのようだ。40分にブカヨ・サカとピエール=エメリク・オーバメヤンのコンビネーションで決定機を作られたが、エデルソンの牙城は崩れず。アーセナルにゴールに迫られたのは、それっきりだ。

新加入の両DFは「改善する必要がある」

 こうして前半を1-0で折り返したシティは、後半に入ると、“省エネモード”に一転。あえてアーセナルにボールを持たせて、無理をしない。2点目、3点目を奪いには行かず、どこかペップらしくないサッカーで、そのまま試合を終えた。もっとも3バックの内、2人がルベン・ディアスとナタン・アケという新加入の選手だったことを踏まえれば、無理をしてカウンターを食らうことは、いかにペップと言えど、避けたかったかもしれない。

 スキンヘッドの指揮官は、ポルトガル代表とオランダ代表の両DFについて、試合後、次のように言及した。

「ルベンとナタンの両選手はミスをしなかったね。私達は昨シーズン、自分たちが犯した多くのミスに苦しんだが、まだ多くのことを改善する必要がある。私は彼らが本物のディフェンダーだと感じているよ。我々のスタイルのためのビルドアップとスペースの作り方において、私は彼らを助ける必要がある。私達にはそのためのトレーニングの時間がある」

 言い換えると、ルベンもアケもシティのサッカーに適合するにはまだ「時間」を必要とするということになるが、ペップはアーセナル戦での2人のパフォーマンスに満足しているようだ。そして弟子を軽くあしらった勝利は、開幕以来の低空飛行を抜け出すきっかけとなるかもしれない。アタッカーのセルヒオ・アグエロも戦列に復帰した。偉大な師匠は「我々にとって勝利は自信とメンタリティのために大切だ」と言う。

ペップの5年目は成熟か退化か

 それにしても、後半に入って相手にボールを明け渡すサッカーを選択したことを、“ペップの進化”と見なすのは、大袈裟に過ぎるだろうか。これがディエゴ・シメオネだったら何の違和感もなく見て取れるのだが、なんせシティの監督は、ボールを保持して攻撃し続けることに美学を見出すクライフイズムの継承者である。その主義主張の裏を返すと、こちらがボールを持っている限り相手は攻撃できない、つまり自分たちは失点しない、という極端な考え方でもあるとのこと。そんな崇高な理想の持ち主が、敵にボールをプレゼントする――。

 もっとも、このプレミアでの数年間で、ペップがシメオネのようなサッカーをした試合があったのかもしれない。というのも、私事で恐縮ですが、ペップがバイエルンからシティに移ってから、ドイツ、オランダ、ベルギーあたりの取材で一杯いっぱいで、ペップ・シティの試合を追えていなかった。そんなこんなで、スタジアムの照明に照らされて光り輝くハゲ頭を観ることができたのは、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)の試合くらいだったのだ。

 いずれにしても、バイエルンを離れてから過ぎた年月の中で、ペップが変化したのは確かだ。ブンデスリーガでは一強独裁だったとは言え、たとえ省エネのためでも、わざわざポゼッションを放棄することはなかった。

 そしてCLの重要な局面では、たいがい理想を貫いて沈むペップの姿がそこにあった。バイエルンを率いていた時代はもちろんのこと、シティに移ってからも、大雑把に言えば、似たような形のカウンターで砕け散り続けて早7年。その時間は、理想を捨てるとまではいかなくとも、現実的な考え方を取り入れていくには十分だったかもしれない。

 ペップとしては異例ともいえる同じチームを率いて迎えた5年目。今季の姿を成熟と捉えるべきか、退化と捉えるべきか。その判断基準は、やはりCLの結果と言えそうだ。

(文:本田千尋)

【了】

新着記事

↑top