アーセナル、“Bチーム”の完勝に重要な意味あり? 5分で決着…若手やサブ組がチャンスに奮起【EL】

UEFAヨーロッパリーグ(EL)のグループステージ第2節が現地29日に行われ、アーセナルはアイルランド王者のダンダークに3-0で快勝した。ミケル・アルテタ監督は普段出番の少ない選手たち中心のメンバーを送り出したが、彼らは見事に起用に応えるパフォーマンスを披露した。この試合の采配から、今季のアーセナルにおけるチーム作りの方向性が見えてきそうだ。(文:舩木渉)

2020年10月30日(Fri)12時40分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
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実質“Bチーム”でダンダーク戦へ

アーセナル
【写真:Getty Images】

 照準が週末のマンチェスター・ユナイテッド戦に向いていたのは間違いない。

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 現地29日に行われたUEFAヨーロッパリーグ(EL)のグループステージ第2節、アーセナルは実質的なBチームと言って差し支えない先発メンバーでアイルランド王者ダンダークと対戦した。そして3-0で勝利を収めている。

 アイルランドリーグはUEFAが公表している最新のカントリーランキングで37位となっている。加盟国・地域の中で最下位のサンマリノが55位なので、37位は下から数えた方が早い。

 プレミアリーグで出場機会の限られる若手がレンタルに出される際、行き先にイングランド2部や3部、あるいはスコットランド1部が選ばれることは多くとも、アイルランドリーグはほとんど聞かない。

 UEFAネーションズリーグで上から2番目のリーグBに属しているアイルランド代表は、大半がイングランドでプレーしている選手で構成されている。これらの事実からプレミアリーグとアイルランドリーグのレベルがいかにかけ離れているかおわかりいただけるはずだ。

 そんな明らかな格下の相手だったこともあって、ミケル・アルテタ監督は主力の温存を容易に決断できただろう。

 快勝した試合後には「簡単なように見えただろうが、我々は非常に規律がとれていた。試合に真剣に向き合っていたし、100%で挑まなければ問題が起こるのはわかっていたから、最初から正しいことができていたと思う」と語った。一方で「全ての選手にチャンスを与えたかった」と普段は控えに回ることの多い選手をあえて起用したことも認めている。

 先発メンバーの一覧にピエール=エメリク・オーバメヤンやアレクサンドル・ラカゼット、ガブリエウ・マガリャンイス、トーマス・パーティ、ブカヨ・サカ、ダニ・セバージョス、ウィリアンといった名前はなし。彼らはベンチメンバーのリストに載っていた。

 だが、「多くのメンバーを変更したが、彼らはチャンスに値するいいプレーをした」とアルテタ監督が振り返ったように、“Bチーム”の選手たちは首尾よく勝ち点3をドレッシングルームに持って帰ってきた。

アルテタ監督は選手たちを称賛

 グラニト・ジャカを3バックの中央に配置した3-4-3でスタートしたアーセナルは、序盤からボールを握ってハーフコートゲームを展開。開始3分で相手にミドルシュートを許したものの、加入後初出場となったGKルナール・アレックス・ルナールソンがしっかりとセーブし、その後はほとんどチャンスを与えなかった。

 特に前半はアーセナルが雨あられのようにシュートを浴びせることとなる。ダンダークは5-3-2で自陣深くにブロックを敷いていたが、実力差は火を見るよりも明らかだった。

 勝敗の行方はハーフタイムを挟んでたった5分ほどの間に決まってしまった。

 コーナーキックの場面で相手GKが飛び出すも処理しきれず、こぼれたボールをエディー・エンケティアが押し込んで42分にアーセナルが先制点を奪う。その約2分後、ニコラ・ぺぺからのお膳立てを受けたジョー・ウィロックがゴール左から豪快なシュートを蹴り込んでリードを2点に広げた。

 そしてハーフタイムが明けた直後の46分、今度はウィロックの横パスをペナルティエリア手前で受けたぺぺが、寄せてきた2人のDFの間を利き足と逆の右足のコンパクトな振りで射抜いた。このゴールでリードは3点となり、ダンダークの選手たちも意気消沈。後半がほぼ丸ごと残っていても、それまでの展開を考えれば追いつくのが極めて難しいことは容易に理解できたはずだ。

「本当に辛抱強く、いいトレーニングを積んでいる選手たちがいた。今日、彼らは必要な時に十分な準備ができていることを示したと思う。私の今後のメンバー選びを難しくしてくれた」

 アルテタ監督はチームの勝利に大きく貢献した、普段は出番の少ない選手たちを称えた。昨季はプレミアリーグで29試合に出場してブレイクを果たしたウィロックも、今季はいまだリーグ戦出場なし。厳しい立場に置かれる中でも1得点1アシストという結果を残した。

 エンケティアや加入後初出場のGKルナールソン、セドリック、エインズリー・メイトランド=ナイルズ、リース・ネルソンといった選手たちにとってもいいアピール機会になっただろう。

過密日程をどう乗り越える?

ジョー・ウィロック
【写真:Getty Images】

 ウィロックは試合後にカメラの前に立ってインタビューに応え、「このチームでプレーできて感謝している。先発で出場することは僕にとって非常に嬉しいことで、家族にとっても誇りに思える瞬間。今日はうまくいったと思う。ゴールという形でチームに貢献できて幸せだ」と自らの活躍を喜んだ。

 アルテタ監督は「僕にトレーニングで一生懸命に努力を続けるようにと言っただけ」で、「出番をもらった時に、チャンスは自分の手でつかまなければならない」と21歳のMFは語る。

「多くの大会があって、僕たちはそれらを戦うためにここにいる。僕は監督に『自分の立場のために戦いたい』と言ったんだ。自分に何ができるかを示す、今日のようなチャンスが増えることを願っているよ」

 ELは全試合が木曜日開催で、アウェイゲームの遠征も厳しくなりがちな大会として知られている。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)とは別物で、週末の試合に向けての身体的な負担も大きい。

 しかも、アーセナルの場合はELグループステージの対戦相手に「格下」と位置づけられるクラブが多く、直後にプレミアリーグのビッグゲームが組まれていることが多い。例えば今週は木曜日のダンダーク戦の後、日曜日にユナイテッド戦が予定されている。

 ELの次節はホームのモルデ戦だが、直後の週末には好調のアストン・ヴィラとの一戦が待ち構えている。さらにアウェイでのモルデ戦からイングランドに帰ってすぐウォルバーハンプトン戦。12月に入るとELのラピド・ウィーン戦の直後がトッテナムとのノースロンドンダービーで、以降は週2試合ペースの連戦が年明けまでずっと続いていく。

 結果を出しながらこうした過密日程を乗り越えるには、ある程度ターンオーバーしながら選手をやりくりしていくしかない。対戦順と対戦相手の力関係を考えれば、今後もリーグ戦にフルメンバーを揃えることを念頭にチーム作りを進め、ELは若手中心で戦っていく方向になるだろう。週末のユナイテッド戦を強く意識したであろう、今回のダンダーク戦のメンバー構成も理に適っている。

 ELでアピールした選手たちが競争を喚起し、適切に評価されてリーグ戦でも出番を与えられるようになっていくと、チーム全体の競争力が高まっていく。“Bチーム”で臨んだダンダーク戦は、比較的簡単なゲームではあったが、アルテタ監督が今後若手やサブの選手たちをどう扱っていくか見定めるために重要な場となったに違いない。

(文:舩木渉)

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感染症を抑えながら経済を回す。世界は今、そんな無理難題に挑んでいる。
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そういった意味ではベンゲルが作り上げたアーセナルと今の世界は大いにリンクする。
ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。

“新アーセナル様式”の今後を追う。

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【了】

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