レスターの5-4-1、それは…。恐るべきヴァーディーまでの距離。特異な戦術にして最適な戦術に迫る【カメレオンの生息プラン・後編】

「プレミアリーグ謀略者たちの兵法」と題してプレミアリーグの監督たちを特集した12/7発売『フットボール批評issue30』から、今季のプレミアで注目を集める変幻自在の「カメレオン・レスター」に本誌初登場となる元Jリーガー・柴村直弥氏が自身の経験を盛り込みながら解説を試みた記事を、発売に先駆けて一部抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(文:柴村直弥)

2020年11月26日(Thu)10時40分配信

text by 柴村直弥 photo Getty Images
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4人対5人の難しさとメリット

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【写真:Getty Images】

シティのように、特に近年このスタイルの攻撃をするチームは増えているが(日本だと代表的なのはペトロヴィッチ監督がサンフレッチェ広島時代に施行したシステム)、対応策として5バックにして、5対5の形で対応するのは定石のひとつではある。ただ、シティ、そしてグアルディオラ監督はそんな相手を幾度となく撃破してきた。

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 形だけで守れるはずがない。

 レベルはもちろん違うが、筆者自身もJリーグなどで、同じように応対する最終ラインの選手としてプレーしたことがあるが、4バックの場合は5人に対して4人で対応するため、はっきりとマークにつくことが難しい。

 相手選手をあえて自分たちの間に置き、1人が1・2〜1・3人分見るようなイメージで、入ってきたボールに対してアタックするような感じで対応したが、横ずれのスピードや、どの相手選手にアタックにいく、いかない、の判断など、ボールや人が動くたびに随時頭を整理しながら動く必要もあり、非常に対応は難しかった。

 さらに、相手(ボールの出し手)が速くボールを回していたり、縦パスの精度が高かったり、ボールの受け手である最前線の5人のクオリティが高いと、より守備の対応は難しくなる。それに対して、5バックの形で5人に対して5人で対応した経験もあるが、そのほうが基本的には1人が1人マークにつくようなイメージとなり(もちろんカバーのポジションも取るが、基本的には)、守るほうとしては守りやすく、攻撃側としては攻めづらい。

 ただ、当然最終ラインが4人で守れるのであれば、中盤より前に6人配置できるため、攻撃に転じやすい。どちらを選択するかは、相手との力関係、選手たちの戦術理解度、特性にもよるだろう。

シティの攻撃を防ぐ最適な戦術とは?

レスターの守備時の最終ラインと中盤のラインの間はおよそ7〜10メートル(センターサークルが半径9・15 メートルで、芝生の色の切れ目がおよそ7メートル)。1トップのヴァーディーまでの最終ラインからの距離は、時には13〜18メートル程度にもなる。

 10年前には「守備時に守備の最終ラインから最前線のFWのラインまでをコンパクトにしなさい。その距離は35メートル程度に」と選手たちに目安の数字を示す監督もいた。現代サッカーでは守備時にはコンパクトな陣形を保つことがさらに重要になってきている。

 しかし、多くの監督が示すのは守備時の最終ラインから最前線までのラインをせいぜい30メートル程度に保つというようなもの。25メートルというのもあまり見かけない。そして聞かない。そうした中で、13〜18メートルのコンパクトさを保つという戦術は特異な戦術であるといっていい。

 その目的は、シティの選手たちに、DFラインと中盤のラインの間のスペースでボールを容易に受けさせない、というのが最たるものだろう。なぜなら、そのスペースで容易にボールを受けられた時のシティの攻撃のクオリティは非常に高く、失点に繋がる確率が高いと判断しているからだと推察できる。

 そこが難しいとなると、シティの他の攻撃手段として、サイドを突破してクロス、という方法がある。これに対しては、中央に3人のCBを配置していることに加えて、その前に位置する中盤の4人のラインも前述したようにコンパクトなため、ペナルティーエリア内のスペースは非常に少なく、容易には崩せない。そうなると、[5‐4]のブロックの外側からのミドルシュート、ということもあるが、それも距離が遠い上に間に多くの選手がいるため、これも難しい。すなわち、シティの攻撃を防ぐには最適な戦術となっているのだ。

(文:柴村直弥)

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30号_表紙_fix

『フットボール批評issue30』


定価:本体1500円+税
プレミアリーグ謀略者たちの兵法

≪書籍概要≫
監督は謀略者でなければならない。それが世界最高峰の舞台であるプレミアリーグであればなおのことだ。さらに中堅以下のクラブを指揮している場合は、人を欺く行為こそ生存競争を勝ち抜くために必要な技量となる。もちろん、ピッチ上における欺瞞は褒められるべき行為で、それこそ一端の兵法と言い換えることができる。
BIG6という強大な巨人に対して、持たざる者たちは日々、牙を研いでいる。ある監督は「戦略」的思考に則った「戦術」的行動を取り、ある監督はゾーン主流の時代にあえてマンツーマンを取り入れ、ある監督は相手によってカメレオンのように体色を変え、ある監督はRB哲学を実装し、一泡吹かすことだけに英知を注ぐ。「プレミアの魔境化」を促進する異能たちの頭脳に分け入るとしよう。



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【了】

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