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セリエA 3年前

ミランが強い! セリエA制覇も夢ではない。イブラヒモビッチ&指揮官不在のピンチを救う存在は…【分析コラム】

セリエA第9節、ACミラン対フィオレンティーナが現地時間29日に行われ、2-0でミランが勝利した。ズラタン・イブラヒモビッチとステファノ・ピオーリ監督を欠きながらも、セリエAでは好調を維持。10年ぶりのセリエA制覇も夢ではないのかもしれない。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

フィオレンティーナに優勢勝ち

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【写真:Getty Images】

 今、ACミランが強い。9試合を終えて7勝2分、5ポイント差をつけて首位を走っている。時期尚早かもしれないが、10シーズンぶりのセリエA制覇も夢ではない。

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 フィオレンティーナは11月9日にジュゼッペ・イアキーニ監督を解任し、チェーザレ・プランデッリ監督を招聘している。セリエAで今季初の監督更迭によって、かつて5シーズン指揮を執ったプランデッリが復帰。しかし、4試合連続でゴールを奪うことができず、ミランに0-2で敗れている。

 ミランが強いのは確かだが、相手を圧倒して勝った試合はそこまで多くない。柔道の優勢勝ちや、ボクシングの判定勝ちのような試合運びで勝ち点3を掴んでいる。

 ミランはハイプレスで相手の自由を奪い、できるだけ敵陣でプレーすることにプライオリティに置いている。この試合もフィオレンティーナに攻め込まれる時間があったが、90分を通してみるとミランが主導権を握ったゲームだった。

 17分の先制点はセットプレー。ハカン・チャルハノールのCKをフランク・ケシエがニアで逸らし、ファーでアレッシオ・ロマニョーリが頭で押し込んだ。その11分後にはスルーパスに反応したアレクシス・サレマーカーズが倒されてPKを獲得。ケシエがこれを決めて点差を2点に広げた。

 37分にはミランに再びPKのチャンスが訪れたが、ケシエのキックはバルトウォミェイ・ドロンゴフスキが見事なセーブで防いだ。両チームともに決定機は何度かあったが、最後までスコアは動かず。交代枠を使いながら時計の針を進めたミランが今季7勝目を挙げた。

イブラヒモビッチ不在で前線に変化

 イブラヒモビッチ不在の影響がないと言えば嘘になる。サイドに流れて起点になり、ポスト役になって2列目の選手を前に向かせるプレーは、ミランの中で群を抜いてうまい。ただ、ミランはイブラヒモビッチ抜きの戦い方も見つけようとしている。

 レビッチを1トップで起用することで、DFラインの裏を取る攻撃という点はプラスに働いている。リール戦では相手の高いDFラインの裏をレビッチは再三に渡って狙っていた。それ一辺倒になってしまったことが反省材料だったが、フィオレンティーナ戦では裏に抜けるだけでなく、ライン間に下りてボールを引き出すシーンも増やしていた。

 2点目のPK獲得につながったシーンがそれを象徴している。スローインをもらいに下がったレビッチが空けたスペースに、セカンドトップのディアスと逆サイドのサレマーカーズが走りこんだ。ポゼッション時は左サイドハーフのチャルハノールがトップ下に移動して、テオ・エルナンデスがオーバーラップするスペースを作る。この日のミランはチーム全体の連動がうまく機能していた。

安定感があった守備

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【写真:Getty Images】

 攻撃陣が2点を取れば、この日の守備陣は無失点に抑えた。セリエAでのクリーンシートは6試合ぶりだったが、今のミランには大崩れしない安定感がある。

 プレッシングの強度の高さはその理由の一つになるだろう。これも数少ない、イブラヒモビッチがいないことでプラスに働くポイントである。彼らの機動力はファーストディフェンダ―として有用だった。

 ナポリ戦やリール戦ではミドルレンジからシュートを打たれる場面が多かったが、それもこの試合では改善されていた。ケシエとサンドロ・トナーリが献身的に中盤の底で危険なスペースを埋めていた。

 ロマニョーリは先制点を挙げたが、守備面での活躍も光っていた。ここまでは負傷明けで低調な試合もあったが、この試合では的確なカバーリングを披露し、相棒のケアーとともに安定感をもたらしていた。

 ステファノ・ピオーリ監督も新型コロナウイルスの影響で不在。イブラヒモビッチと同い年のダニエレ・ボネーラが引き続き指揮を執る。

 頼れるキャプテンが重要な先制ゴールを挙げてクリーンシートに貢献。監督経験のなかったボネーラも的確な采配で勝ち点3を手繰り寄せた。指揮官とエースが担ってきた役割を、残された1人1人が責任を持って負担している。ピンチを全員でカバーするのがチームである。

 ベストメンバーが揃わない時に勝ち点を拾えるチームは強い。こうして一つひとつの課題を乗り越えた先に、10年ぶりのタイトルも見えてくるのではないだろうか。

(文:加藤健一)

【了】

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