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チェルシーが勝てない。今、何を変えるべきなのか。悩めるハフェルツが輝きを取り戻すための手段は?【分析コラム】

プレミアリーグ第18節、レスター対チェルシーが現地時間19日に行われ、2-0でホームチームが勝利している。チェルシーはこれでリーグ戦直近5試合の成績が1勝1分3敗。フランク・ランパード監督の立場も揺らいでいることは確かだろう。何かを変えなければならない。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

チェルシーは絶不調

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【写真:Getty Images】

 今後しばらくはフランク・ランパード監督に関するニュースを目にする機会が増えるだろう。ただそれは、決してポジティブなものではない。

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 昨年夏に他のクラブが羨むほどの超大型補強を成功させたチェルシーには、特大の期待が寄せられていた。カイ・ハフェルツ、ティモ・ヴェルナー、ハキム・ツィエクなど、すでに欧州トップレベルで結果を残してきた選手が一斉に集ったのだから、それも無理はなかった。

 スタートは決して悪くなかった。プレミアリーグでは第1節~第11節まででわずか1敗という成績を残しており、チャンピオンズリーグ(CL)では無敗を維持して早々に決勝トーナメント行きを決めるなど、試合内容に改善点を残しつつも結果はしっかりと出ていたのだ。

 ところが、12月に入ると調子がガタ落ち。エバートンやウォルバーハンプトン、アーセナルなど、力のあるチームとの対戦が増えて脆さを露呈。同月のリーグ戦5試合でわずか1勝に終わるなど、一瞬で崩れた。そして、年明け一発目のマンチェスター・シティ戦も1-3と完敗。ランパード監督の能力に対する疑いの声も多く挙がってきた。

 先日のフルアム戦は苦しみながらメイソン・マウントの得点で何とか1-0で勝利したが、チェルシーに向けられる厳しい目に変わりはない。ランパード監督の去就に関する話題も日に日に増していた。

 そして、そのネガティブ報道をさらに加速させてしまうことになったのが、現地19日に行われたレスター戦。チェルシーはまたも完敗を喫してしまったのだ。

修正力の差

 チェルシーは4-3-3でレスター戦に挑んだが、形は普段のものと少し異なっていた。中盤はマテオ・コバチッチ、マウント、ハフェルツが並ぶかに思われたが、ピッチ内での動きを見ているとマウントとコバチッチがダブルボランチで、ハフェルツはほぼトップ下という配置。4-2-3-1といった方が分かりやすいかもしれない。

 4-1-4-1で守るレスターに対し、チェルシーは立ち上がりからボールを握った。しかし、相手の素早いチェックに手を焼き、なかなか深い位置へ侵入できない。反対にレスターの自慢である縦に速い攻撃を受け、自陣深くまで戻されるというシーンが序盤から目立っていた。

 そして6分という早い時間に失点。ショートコーナーの流れから、最後はウィルフレッド・ディディにペナルティーエリア外からのミドルシュートを決められている。同選手のフィニッシュは決してミートしているわけではなく、少し運が良かったという気もしなくはないが、いずれにしてもチェルシーにとって痛い失点だったことは確かだ。

 ボール保持を基本としていないレスターに対し、チェルシーは失点後も支配率を高め続けていた。その中でアンカーのディディの脇を突いてチャンスを作ることもあったが、肝心のゴールは遠い。レスターの壁は高かったのだ。

 そして41分、チェルシーはレスターの恐ろしさを体感。何でもないところから1本のロングパスを通され、最後はリース・ジェームズがマークを緩めたことでフリーとなったジェームズ・マディソンにゴールネットを揺らされた。まさに、レスターお得意の“一発”だった。

 2-0で迎えた後半、最初に修正を加えたのはビハインドを負うランパード監督ではなく、リードを手にしているブレンダン・ロジャース監督だった。

 レスターは前半、アンカーを担うディディの脇を突かれて押し込まれるシーンが何度かあった。指揮官はそこが気になったのだろう、後半は守備時にユーリ・ティーレマンスをディディの横に置き、マディソンとジェイミー・ヴァーディーを2トップにする4-4-2へチェンジ。縦レーンに蓋をしたのである。

 これに対しチェルシーはほぼ何もできず、流れを掴めなかった。中央に蓋をされサイド攻撃が増えたが、クロスへ持ち込んでも屈強なDFに跳ね返される。ランパード監督は戦術などではなく選手交代によって変化を試みたが、攻撃を活性化させるまでには至らず。修正力に関しては、ロジャース監督との力の差が出てしまったのかもしれない。

 結局終盤のゴール取り消しもあり、チェルシーは1点も奪うことなく敗れている。順位は暫定8位。今後サウサンプトンやアストン・ヴィラの結果次第では、二桁順位に下がってしまうという状況だ。

ハフェルツが輝くためには…

カイ・ハフェルツ
【写真:Getty Images】

 あれだけの大金を費やしながら直近5試合でわずか1勝。ランパード監督解任を望む声や、選手個々のパフォーマンスを批判する声も多く聞こえてくるのは、当然のことと言えば当然だ。

 ただ、レスター戦は全てが悪かったわけではない。もちろん0-2という結果が出ているので大きく称賛はできないが、わずかな希望があったようにも思う。

 チェルシーが苦戦している原因の一つは、新加入選手の不発にある。とくに攻撃陣、ヴェルナーとハフェルツについては、当初の期待値を遥かに下回っていることは明らかである。

 その二人の中でもハフェルツにがっかりしている人は多いのではないだろうか。移籍金8000万ユーロ(約96億円)を費やして獲得した大物だったが、リーグ戦成績はここまで1得点3アシスト。数字的に物足りないのはもちろん、ピッチ上におけるパフォーマンスレベルもなかなか上がってこない。さすがに時期尚早だと思うが、もはや戦力として見ていない人もちらほらいるようだ。

 レスター戦もハフェルツは不発だった。67分にツィエクとの交代で下がったが、シュート数は0本でキーパスも0本とまたも批判を浴びそうな内容である。ただ、この日はトップ下ということもあり、普段よりかは随所で持ち味を生かしていたのは事実だ。

 たとえば32分の場面では、最終ラインからパスを引き出したマウントからライン間でボールを貰い、DFを引き付けたツータッチでリターン。マウントはそのまま前進し、最後はカラム・ハドソン=オドイのチャンスが生まれている。

 さらには35分にも、ハフェルツがディディの脇でフリーとなる動きを見せアントニオ・リュディガーからパスを引き出し、ボールを前進させることに成功している。後半ロジャース監督が修正してきた事実が示す通り、このアンカーの脇を突くハフェルツの動きはレスターを困らせる一因となっていた。爆発的な貢献度こそなかったが、ドイツ人MFの動きはチームとしての狙いを表現するのに重要となっていたのだ。

 メスト・エジルのようなエレガントさとミヒャエル・バラックのような力強さを持つハフェルツは、レスター戦からも分かると通りやはりトップ下が最適だ。元レバークーゼン指揮官のタイフン・コルクトは以前、『スカイスポーツ』のインタビューで「ハフェルツを右サイドで起用したのは彼が若く、中盤のプレッシャーから解放されるため」と話し、続けて「ハフェルツは前線ならどこでもプレーできるが、ウインガーではないね」とも話している。

 確かにハフェルツの特徴は独力での突破ではない。視野が広くクリエイティブな選手であるから、より多くの選択肢を持てる方が輝ける。それならばウイングに置くのは突破力のあるクリスティアン・プリシッチやハドソン=オドイ、そしてテクニックのあるツィエクらを起用した方がいい。

 インサイドハーフ起用も難しい。とくにチェルシーの場合はなおさら。ハフェルツはスプリントを繰り返して献身的に守備をするわけではなく、非常にマイペースだから物足りなく見える。コバチッチやエンゴロ・カンテ、マウントの方がよく汗かくプレーを行っている。そして、ランパード監督はそういった選手が好きだ。

 上記したことからも分かる通り、大金を費やして獲得したハフェルツを使うならばトップ下、あるいは1トップだ。今後もウイングやインサイドハーフ起用が増えるならば、ハフェルツが輝ける可能性は低い。ただ、レスター戦のようにトップ下配置があれば、時間が経つにつれ結果は出てくるかもしれない。ハフェルツの起用法を変えるのは、復調のきっかけを生み得るプランとして決して悪くないのではないだろうか。

 ヴェルナーやランパード監督お気に入りのマウントのことまで考えれば4-3-1-2のような形もありだとは思うが…。

 いずれにしてもチェルシーはまだ発展途上中。日程が厳しい中、新しいものを取り入れる時間がそう確保できないということは十分理解しているが、何かを変えなければこのままズルズルと行く可能性は否めない。チェルシー、そしてランパード監督には「判断」が迫られている。

(文:小澤祐作)

【了】

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