ACミランは悲惨だった…なぜギリギリの戦いを強いられたのか。改めて浮き彫りとなった弱点は?【分析コラム】

セリエA第20節、ボローニャ対ミランが現地時間30日に行われ、1-2でアウェイチームが勝利している。ミランはPK2本で何とか競り勝ったものの、内容は今季ワーストと言っても過言ではない。なぜ、ここまで苦戦を強いられたのか。そして、改めて浮き彫りとなったウィークポイントとは。(文:小澤祐作)

2021年01月31日(Sun)11時40分配信

text by 小澤祐作 photo Getty Images
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内容は悲惨なものに

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【写真:Getty Images】

『Opta』によると、ミランは第20節ボローニャ戦で得点を挙げたことで、アウェイゲーム20試合連続得点を達成。これはセリエA新記録となったようだ。さらにミランは、2017/18シーズンのナポリ、翌シーズンのユベントスに次ぎ、アウェイ戦10試合中9試合を勝利で終えた3番目のチームにもなっている。

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 と、上記したデータには素晴らしい数字が並んでいるが、実際のところ、現地30日に行われたボローニャ戦は内容がかなり悲惨なものとなっていた。もしかすると、1-3で敗れたユベントス戦、0-3で敗れたアタランタ戦よりも酷いパフォーマンスだったと言えるのかもしれない。

 ボローニャ戦では流れの中からゴールを奪うことができなかった。26分のアンテ・レビッチ、55分のフランク・ケシエによる得点はいずれもPK(レビッチはこぼれ球)。ミランに与えられるPKの多さに不満を抱いていたジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督に、またチクリと言われてしまうかもしれない。

 ミランは最終ラインから丁寧なビルドアップを図っていたが、ボローニャの対応は徹底していた。センターバック2枚にはセンターフォワードとトップ下の選手がダブルボランチへのパスコースを切りながら寄せ、ボールの前進を阻み、その間に全体のラインをアップさせて選手同士の距離をコンパクトにする。それに対しミランは、中盤底サンドロ・トナーリがサイドバックが上がったことで生まれたスペースに落ち、パスコースを確保するなど工夫。ただ、これはあくまでボールを逃がす選択になるので、いずれにしても前に運ぶことにはかなり苦労していた。

 こうなると、ミランは必然的にロングボールが増えてくる。そして強引に敵陣深くに侵入し、奪ったセットプレーなどでチャンスを作り出した。「彼らの唯一のチャンスはロングボールだった」とは試合後のシニシャ・ミハイロビッチ監督の言葉である。

 実際、ミランが奪ったPK2本はセットプレーの流れとロングボールを放り込んだことで生まれたもの。最前線にズラタン・イブラヒモビッチという強力なターゲットがいるので、これもミランの強みと言えば強みではある。

 ただ、問題だったのはそればかりになってしまい、リードを奪ってもなお試合をほとんど落ち着かせられなかったこと。ロングパスは当然、ショートパスを繋ぐより相手にボールを渡す確率が高くなる。そのためミランは、ボローニャにボールを奪われてはカウンターを浴び、バタバタしてあわやといったシーンを作られることが決して少なくなかった。

 GKジャンルイジ・ドンナルンマのファインセーブ連発がなければ、リーグ戦連敗に終わっていてもおかしくはなかった。ミランは結果的に、ボローニャの決定力不足に救われたと言ってもいいだろう。実にギリギリの戦いだった。

ストロングポイントこそ最大のウィークポイント

 このボローニャ戦で改めて浮き彫りとなったのは、ミランはストロングポイントこそが最大のウィークポイントになり得る、ということだ。

 ミランの強みは間違いなく左サイドにある。フランス人SBのテオ・エルナンデスがいるからだ。背番号19の非凡なスピードとフィジカルは他のクラブにとって大きな脅威となっており、実際同選手はすでにリーグ戦4得点3アシストという成績を残している。

 この日もT・エルナンデスはシュート数1本、ドリブル成功数チーム最多の3回、60分には良いタイミングで左から中に侵入し、ダビデ・カラブリアの決定機を演出するなどDFとは思えぬ攻撃センスを発揮。ハカン・チャルハノールが不在だったため、この日はセットプレーのキッカーも担っていた。

 と、良さも少なからず出していたT・エルナンデスだが、この日に関しては悪さの方が目立ってしまった。

 T・エルナンデスは割とボールを持ちたがる傾向にある。これはボローニャ戦だけでなく、これまでもそうだった。そのため、同選手は自陣深い位置だろうとドリブルでボールを運び、相手を剥がして前に進むというプレーをかなり頻繁に行う。つまり、シンプルなクリアなどがかなり少ないのである。

 しかし、ボローニャ戦ではこれが仇となった。自陣深くでボールを持ったT・エルナンデスは、シンプルにプレーすべき場面でドリブル。これをロドリゴ・パラシオに奪われ、ショートカウンターを浴びて失点を招いた。これによりボローニャは一気にギアがアップ。ミランが押し込まれる原因となってしまった。結果論になってしまうが、絶対にやってはいけないプレーである。

 先述した通り、T・エルナンデスのドリブル自体は大きな武器だ。相手に寄せられても剥がすことができる選手は非常に重要で、ステファノ・ピオーリ監督もその攻撃力を存分に引き出そうとしている。だからこそダブルボランチの一角であるケシエを背番号19のカバーに回すなどケアも行っている。

 ただ、T・エルナンデス自身の判断力に改善が必要だ。正直なところ、失点を招いたシーンのドリブルはあまりに不用意だった。以前から自陣深くからのドリブルは多かったが、より相手の対策も進む中、これからはシンプルなプレー選択も重要となってくるはず。同選手の今後の課題と言えるだろう。

 あとはやはり、守備力だろうか。とくにT・エルナンデスは押し込まれた状態、我慢が必要な状況でのディフェンスが極端に弱い。

 0-3で敗れたアタランタ戦ではヨシップ・イリチッチに執拗に左サイドを突かれ、無双されてしまった。そしてこのボローニャ戦でも左サイドは徹底的に狙われている。事実、ボローニャの右サイドからの攻めは36%で中央や左サイドよりも多い数字。そして、ホームチームはシュートエリアも中央からが55%、右サイドからが45%、左サイドからは0%というデータが出ている。

 T・エルナンデスはフィジカル的には申し分ないが、かなり危険な飛び込みを行ってしまうことが多い。事実、ここまでチームで最も多くのカードを貰っているのがケシエと同選手である。SBである以上、まずは守備が肝心。1対1の対応などを向上させていく必要性はやはりかなり高い。

 ただ、T・エルナンデスはまだ若く、今後もミランにとって重要な戦力となることは確か。ボローニャ戦ではウィークポイントが目立つ結果となったが、これを糧に大きく成長してほしいところである。

(文:小澤祐作)

【了】

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