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リバプールは一体どうしたのか? 弱すぎる切り札にクロップの起用法も問題…アンフィールドでの強さはどこへ【分析コラム】

プレミアリーグ第22節、リバプール対ブライトンが現地時間3日に行われ、0-1でアウェイチームが勝利している。リバプールはアンフィールドでまたも無得点で敗戦。優勝争いからまた一歩遠ざかることになった。昨季プレミアリーグ王者に一体何が。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

またもアンフィールドで下位チームに敗北

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【写真:Getty Images】

「より良いチームが勝った。ブライトンはほとんど全てにおいて優れていた。彼らは僕たちを圧迫し、ボールを取り戻してチャンスを生み出していた」。

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 現地3日に行われたブライトン戦でフル出場を果たしたアンドリュー・ロバートソンの試合後の言葉である。確かにリバプールは下位に沈む相手に対し最後まで圧迫されていた。それが、0-1という最悪の結果を招いてしまった。

 この日のリバプールの試合への入りは悪くなかったようにも思う。3分にはブライトンDF陣がラインを上げたのを見逃さず、ジョーダン・ヘンダーソンが精度の高いロングフィードを前線に供給。これに反応したモハメド・サラーがいきなりチャンスを作り出している。

 しかし、その後は5-3-2のブロックを組むブライトンを前に沈黙。リバプールはチアゴ・アルカンタラを中心にボールを動かすが、人への当たりとマークが厳しいアウェイチームは簡単にブレない。ゴール前に侵入することはできても、GKロベルト・サンチェスを脅かすには至らない、という時間がほぼずっと続いていた。

 先に1点を奪った方が勝つといった試合展開の中、リバプールは一瞬の隙を突かれてスティーブン・アルサテに得点を許している。56分のことだ。まだ時間はあるようにも思えたが、ここまでの流れでどこか「今日はダメかな」と思ったのもまた事実である。そして、その嫌な予感は当たってしまった。

 敗れたリバプールは枠内シュートがわずか1本という成績だった。支配率は63.5%を記録したが、シュート数はブライトンを下回る11本。このことからも分かる通り、リバプールはボールを持たされているだけでブライトンより効果的なアクションを繰り出すことができなかった。スコアこそ0-1と大差ないが、ある意味で完敗と言ってもいいのかもしれない。

シャキリの左WG起用はハズレ

ジェルダン・シャキリ
【写真:Getty Images】

 リバプールが今季プレミアリーグで無得点に終わったのはこれが5回目。アンフィールドでは第18節バーンリー戦、第19節マンチェスター・ユナイテッド戦に続きこれで3試合連続無得点である。ユナイテッド戦は例外かもしれないが、やはり引いた相手に対し簡単に苦戦してしまうようになっている。

 今回のゲームはブライトン側の守備が非常に良かった点もあるかもしれないが、ユルゲン・クロップ監督の選手配置にも問題があったと言えるだろう。とくに沈黙してしまったのはジェルダン・シャキリだ。

 サディオ・マネやディオゴ・ジョッタが不在の中、スイス代表MFはブライトン戦で左ウイングに配置されている。これまで背番号23がリバプールにおいて同ポジションを務めたのはたった2回で、プレータイムは73分間。そのため、この起用は少々意外だった。

 結論から言うと、シャキリの左WG起用は大失敗だった。クロップ監督が後半に入りシャキリを右、ロベルト・フィルミーノを左に回したことからも、うまく行っていなかったのは明らかである。もったいない45分間を過ごしてしまった。

 ご存じの通り左利きであるシャキリは強靭なフィジカルを駆使したカットインを得意としており、精度の高い左足キックでチャンスに絡むことを得意としている。しかし、この日は左サイドに配置されたことでカットインという武器が消滅。そしてブライトン側のタイトな守備に遭いマネのような縦への突破、あるいは抜け出しもできず、攻撃を活性化させるには至らなかった。

 また、ポジショニングにも大きな問題が。シャキリはタッチライン際でボールを受けることも多かったが、先述した通りあまり中へ入っていけないため、必然的にロバートソンの上がるスペースを消してしまうこともあった。仮に内側を意識してもフィルミーノと動きが被ったり、ジェームズ・ミルナーとの距離が不用意に近づいてしまったりと連係面の不足を露呈。WGとしての機能性を欠いた。

 上記した通り後半はシャキリが右、フィルミーノが左へ移った。ブラジル代表FWも決して本調子とは言えなかったが、70分には一つ良い形を作った。左サイドでボールを受けると、相手DFのマークに遭いながらも内側を向きドリブル。そして中央のチアゴにボールを預け、そこから右サイドに展開。ブライトン側を大きく揺さぶり、サラーの決定機を生みだしている。

 こうした内側を向きながら相手を引き付けインサイドハーフを使う、といった形は前半のシャキリには残念ながら見られなかったもの。それはもちろん、左サイドに配置されたことでの難しさがあったからだ。「たられば」は禁物だが、シャキリを使うならば4-3-1-2といった形でも良かったのかもしれない。

無意味に終わった選手交代

 そして、リバプールが不発に終わったもう一つの理由は切り札の弱さだ。

 アルサテに先制点を奪われてから8分後、クロップ監督は2枚替えを行っている。シャキリとジョルジニオ・ワイナルドゥムを下げ、ディボック・オリギとアレックス・オックスレイド=チェンバレンの両者を投入した。

 しかし、この交代が何の効果ももたらさなかった。

 オリギは動きがまったく読めず、沈黙。シュート数は0本に終わっており、タッチ数は約25分間のプレーでたったの7回。ベルギー代表FWはいよいよ限界だろう。そしてオックスレイド=チェンバレンもギアが上がらず、ボールを不用意に持ちすぎて囲まれ、ロストを繰り返すなど不安要素に。怪我でスタートダッシュに失敗し、復帰後なかなか試合に絡めていないという点を考慮しても、かなり厳しいパフォーマンスだったと言わざるを得なかった。

 ナビ・ケイタやジョッタ、マネが離脱中で、リバプールの控えには新加入ベン・ディビスなどDFの選手が6名、前の選手はカーティス・ジョーンズ(79分出場)、オックスレイド=チェンバレン、オリギ、そしてジェイク・ケインが入っていた。このメンバーを見て流れを変えようと送り込むなら、確かにオリギとオックスレイド=チェンバレンのチョイスになる。その二人がこれほど低調に終わるとなると、クロップ監督としてもかなり痛かったはずだ。

 敗れたリバプールは首位マンチェスター・シティとの勝ち点差が7に広がってしまった。しかもシティは1試合未消化。連覇への道はかなり厳しくなった。

 次節はそのシティとの対決が控えている。クロップ監督はブライトン戦後に「ディオゴは…正確には分からないが…数週間、2週間、3週間、4週間。わからない。サディオはどうかな。週末には出られるかもしれない」と負傷者二人について言及している。果たしてどうなるか。

(文:小澤祐作)

【了】

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