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マンUを苦しめた強烈な先制パンチ。一発狙いの相手に露呈した打開力不足、遠のくマンCの背中【分析コラム】

プレミアリーグ第24節が現地14日に行われ、マンチェスター・ユナイテッドはウェストブロムウィッチ・アルビオンと1-1で引き分けた。アウェイでの無敗記録を19試合に伸ばしたものの、試合展開を見ると今後への不安が募る。2位につけるユナイテッドは優勝戦線に生き残ることができるのだろうか。(文:舩木渉)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

引いた相手を崩しきれず…

マンチェスター・ユナイテッド
【写真:Getty Images】

 マンチェスター・ユナイテッドは直近のリーグ戦7試合で10ポイントしか獲得できていない。

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 得失点差によって2位につけてはいるものの、首位のマンチェスター・シティに7ポイント差をつけられている。ペップ・グアルディオラ監督率いるライバルの背中は遠ざかる一方だ。

 現地14日に行われたプレミアリーグ第24節のウェストブロムウィッチ・アルビオンとの一戦は、1-1のドローに終わった。ユナイテッドにとっては何としても勝たなければならず、勝って当然と思われていた試合だけに、痛恨の結果と言っていいだろう。

 オーレ・グンナー・スールシャール監督も「素晴らしいプレーもあったし、パフォーマンスも良かったので、ポジティブな点はいくつかある。だが、1ポイントのみの獲得にとどまったことには失望している」と肩を落とした。

 ユナイテッドはアウェイでの無敗記録を「19試合」に伸ばしたが、「現時点でその記録に全く意味はない」と指揮官は強調する。優勝戦線に生き残るためにも、より継続的に3ポイントを上積みし続けられる力をつけなければならないのは明白だ。

 ウェストブロムウィッチ戦で顕著に表れたのは、チームとしての打開力不足だった。ボール支配率で74%という極めて高い数字を叩き出しながら、90分間で放ったシュートは10本のみ。チャンスの数が明らかに少ないだけでなく、ゴールも1つしか奪えなかった。

 1点ビハインドで迎えた44分、ルーク・ショーのクロスをブルーノ・フェルナンデスが左足ボレーで叩き、ゴールネットを揺らした。これがユナイテッドにとって唯一の得点である。ゴール前の限られたスペースで、ほぼブルーノ・フェルナンデスの個人技によって生み出されたゴールと言ってもいい。

 結局、相手に引かれてスペースがなくなった時、打開策になるのは圧倒的な個のクオリティであり、チームとして、あるいはブルーノ・フェルナンデス以外の選手たちに強固な守備ブロックを崩すだけのアイディアが欠けている。

開始早々に浴びた強烈なパンチ

 ウェストブロムウィッチにとっては理想的な展開だった。開始2分で先制に成功したのである。

 ユナイテッドのクリアボールを拾ったエインズリー・メイトランド=ナイルズが右サイドへ展開。パスを受けた選手はワンタッチで後ろに下げると、コナー・ギャラガーがワンタッチでペナルティエリア内に高い弾道のクロスを入れる。最後は冬に加入した長身ストライカー、エンバイェ・ディアニェがヘディングシュートでゴールネットを揺らした。

 ガラタサライからやってきたセネガル代表FWは、マークについていたヴィクトル・リンデレフの前に強引に体を入れ、頭にボールを当てた。この強烈な先制パンチがユナイテッドにとって最後まで重くのしかかることになる。

 開始早々に先制したウェストブロムウィッチは、潔く自陣の低い位置に守備ブロックを敷いてゴール前を固めた。彼らにとって前半のうちに先制できれば御の字、ユナイテッド相手なら引き分けでも十分に価値があると考えていただろう。

 そんななか、おそらく想定よりも早い時間帯ではあったが、幸先よく先制に成功。あとは欲を出さず相手の攻撃を封じ込め、できるだけ無失点の時間を長くしていけばよい。アタッカーの選手たちも献身的に守備をこなし、前半終了間際に失点するまでほとんどユナイテッドにチャンスを作らせなかった。

 ウェストブロムウィッチを率いるサム・アラダイス監督は「(序盤に得点して)素晴らしいスタートを切ることができた。あれは我々にとって大きなボーナスだった。素晴らしいヘディングだった」と殊勲の先制弾を叩き込んだディアニェとチームの奮闘を称えた。

 後半にハリー・マグワイアがペナルティエリア内で倒され、一度はPKが宣告されたが、VARの介入によって取り消しに。ウェストブロムウィッチは判定にも救われた。

「2位に甘んじるつもりはない」と強気だが…

エムバイェ・ディアニェ
【写真:Getty Images】

 ボールを奪ったらカウンターと割り切っていたウェストブロムウィッチにとって、リードしているか、あるいは同点の状況は優位に立っているのとほぼ同義だった。後半にはディアニェがマグワイアを引きずりながらフィニッシュまで持ち込む場面もあり、“ビッグ・サム”の戦術と選手起用がバッチリとはまっていた。

「あの場面はディアニェにとって試合中で最も難しいチャンスだっただろう。他の日ならドレッシングルームに戻ってきた時に、ボールを持って座っていたはずだ」

 ハットトリックを決めると、試合球をもらって他のチームメイトたちがサインを入れるのがサッカー界の慣習。アラダイス監督はディアニェが1得点にとどまらず、ハットトリックを達成できたと考えている。「勝利するに値するだけのチャンスを作ることができた」と誇るのは強がりではなく、今回のユナイテッド戦に関しては真実だ。

 今季のユナイテッドは格下相手の取りこぼしが少なく、ここまで上位争いに絡んできた。先月末シェフィールド・ユナイテッドに敗れたものの、リーグ戦は現時点で4敗。最近の試合で引き分けたのはエバートンやアーセナル、リバプールといった実力で拮抗した相手が多かった。

 ところがウェストブロムウィッチ戦のように先制され、逃げ切りを図られた時に打開力不足を露呈したのは今後への不安要素だろう。終盤戦に向けて手堅い戦いを挑んでくる相手も増えてくると予想されるだけに、今回のドローは優勝争いに小さくない影響を与えるかもしれない。

 一瞬の隙を突かれて浴びた先制パンチは強烈だった。自陣に引きこもってカウンターを狙い、強力なストライカーの一発でKOという展開が増えれば、不要な勝ち点の取りこぼしが増えてしまう。

 スールシャール監督は「誰も早々に諦めることはない。今季は予測不能で、人生も予測できないものだ。何事も起こりうる。もちろん我々も2位に甘んじているつもりはない」と強気だ。しかし、現実を見つめてブルーノ・フェルナンデスの個人能力以外にガードを固めた相手を崩す術を早急に見つけていかなければ、シティに追いつき、追い越すことは極めて難しい。

(文:舩木渉)

【了】

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