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ブルーノ・フェルナンデスはストライカーとしても最高。取り戻したマンUらしさ、活躍は司令塔だけに留まらず【EL分析コラム】

UEFAヨーロッパリーグ(EL)ラウンド32・1stレグ、レアル・ソシエダ対マンチェスター・ユナイテッドが現地時間18日に行われ、0-4でユナイテッドが勝利を収めた。ブルーノ・フェルナンデスは2得点の活躍でチームを牽引。ユナイテッドは前線の選手の質の高さで、相手を圧倒していた。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

4点奪取でソシエダを撃破

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【写真:Getty Images】

 UEFAヨーロッパリーグ(EL)は決勝ラウンドに突入した。死のグループを2位で抜けたレアル・ソシエダと、UEFAチャンピオンズリーグで3位となりELに回ったマンチェスター・ユナイテッドが激突。ラウンド32屈指の好カードとなった一戦は、下馬評以上に大差がついた。

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 両チームともに立ち上がりから決定機を作った。およそ1か月ぶりの出場となったエリック・バイリーの裏をソシエダは突き、アレクサンデル・イサクがチャンスを迎える。しかし、ディーン・ヘンダーソンの好セーブもあって、ゴールを奪うことはできなかった。

 ユナイテッドの狙いは、右センターバックを務めたイゴール・スベルディアの裏のスペースだった。左ウイングで起用されたマーカス・ラッシュフォードやトップ下のブルーノ・フェルナンデスが執拗に突いた。

 その狙いは27分に実を結んだ。ラッシュフォードの浮き球のパスに抜け出したのはブルーノ・フェルナンデス。前に出たGKの位置を見極めて放ったシュートはゴールネットに収まった。

 57分の追加点はブルーノ・フェルナンデスがセンターバックの背中を取って決めた。GKのスローイングからロングカウンターをラッシュフォードが仕留めて3点目を決める。試合終了間際にはバイリーのパスを受けたダニエル・ジェームズが右サイドからドリブルでペナルティーエリアに侵入。GKの股を狙うシュートでゴールネットを揺らした。

取り戻したマンUらしい攻撃

 両GKの好セーブがなければ、7-1くらいスコアは開いたかもしれない。ユナイテッドらしい、縦への意識の強いプレーが大量得点に結びついた。オーレ・グンナー・スールシャール監督は試合後に「私たちは、自分自身にもう一度戻りたかっただけ」と語る。チームはプレミアリーグの直近5試合で1勝しかできておらず、マンチェスター・シティとの差を広げられていた。

「(グリーンウッドを1トップで起用するという)今日の決断は、マーカスとダン(ダニエル・ジェームズ)がいて、相手の最終ラインの後ろにスペースが生まれると思ったからだ」

 エディンソン・カバーニは負傷の影響で遠征に帯同できず、アントニー・マルシャルもコンディションの問題でベンチスタートに。チーム事情もあったが、グリーンウッドの1トップ起用、両ウイングにダニエル・ジェームズとラッシュフォードという前線の起用は当たった。

 右サイドではダニエル・ジェームズが献身的なプレスバックを繰り返し、パスが出なくてもDFラインの裏を何度も狙った。決定機をGKに阻まれた場面もあったが、試合終盤のゴールは90分走り続けたご褒美になった。

 ラッシュフォードは左サイドで1対1を作り、ブルーノ・フェルナンデスの決定機を生み出した。グリーンウッドは慣れないポジションだったが、時折ジェームズやラッシュフォードとポジションを交換して相手を惑わせていた。

 ハイラインを敷いたソシエダに対し、スピードのある3人を起用したスールシャール監督の采配は的中した。

ブルーノ・フェルナンデスの質

 3人のFWは輝いたが、今日の主役はブルーノ・フェルナンデスだった。今季4度目の1試合2得点で、今季の公式戦での得点数を21まで伸ばしている。

 21得点にはPKと直接FKによるゴールが含まれているが、この試合の2得点はいずれもストライカーのようなゴールだった。もちろんポジションはトップ下だが、DFラインの裏を取る動きを繰り返したことが、2得点につながった。稀代の司令塔はストライカーとしても最高だった。

 ユナイテッドは3人のFWがいずれもスピードに長けたタイプだったので、ブルーノ・フェルナンデスが裏を取ろうとしていたのは少し意外だった。ただ、ユナイテッドの前線が3人であればソシエダのセンターバックが1人余るのでカバーリングに回れるが、4対4ではそれができない。

 相手の4バックが高いラインを保っていたので、数的同数の状況を作るのは理にかなっていた。「彼はスペースを見つけるのが得意」とスールシャール監督が称賛した通りで、ブルーノ・フェルナンデスの能力が大量得点につながった。

 2点目のシーンではアシスタントレフェリーがオフサイドフラッグを上げたが、VARのチェックによってゴールが認められている。それくらいギリギリのタイミングで飛び出していた。スペースを見つけるのが得意で、動き出すタイミングが巧い。シンプルなスピードではジェームズやグリーンウッドに劣るが、ブルーノ・フェルナンデスは動きの質で勝負していた。

 チャンスを生み出すプレーも高いレベルでこなしていた。データサイト『Whoscored.com』による集計では、この試合のキーパス数が3本。中盤に降りてボールを引き出して正確なロングボールを蹴り、サイドに展開するプレーもいつものように秀逸だった。

 10番(トップ下)としてのチャンスメイクはもちろん、8番(インサイドハーフ)のような展開力も備え、9番(センターフォワード)として2得点を挙げる。それでいて守備も怠らないのだから、トップ下の選手としては文句のつけどころがない。

 指揮官はブルーノ・フェルナンデスを「2得点決めたら3点目を欲しがり、アシストしてももう1つアシストしたいと思っている」と評している。「ゴールを決めることより、トロフィーを勝ち取ることが重要だ」と語るブルーノ・フェルナンデスに慢心という感情は存在しない。稀有な能力と飽くなき向上心が驚異的な活躍を支えている。

(文:加藤健一)

【了】

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