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メッシが労働者に…! バルセロナの奇策とは? セビージャを撃破したクーマン監督の狙い【分析コラム】

ラ・リーガ第25節、セビージャ対バルセロナが現地時間27日に行われ、0-2でバルセロナが勝利を収めた。勝ち点差2だった両チームの対決で、リオネル・メッシは1得点1アシストの活躍。ロナルド・クーマン監督の奇策が、フレン・ロペテギ監督が作り上げた堅守を破った。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

主導権を握ったバルセロナ

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【写真:Getty Images】

 パリ・サンジェルマン戦では1-4という大敗を喫し、試合中にジェラール・ピケとアントワーヌ・グリーズマンが罵り合う場面があった。バルセロナは次戦でカディスに引き分け。ラ・リーガでの連勝は7で止まり、チームには重い空気が立ち込めた。

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 しかし、直近のエルチェ戦は後半に3点を奪って勝利を収めた。ピケは「エルチェ戦の後半にいいプレーをして、今日は我々がまだ生き残っていることを示すことができた」とセビージャ戦後にコメントしている。グリーズマンはピッチにいなかったが、要所でゴールを決めて勝利を手にした。

 29分、フェルナンドがハイボールを競りにいったことで、セビージャの中盤にスペースが生まれた。セルヒオ・ブスケッツからパスを受けたメッシがスルーパスを送る。これに反応したウスマン・デンベレが、左足を振り抜いてゴールネットを揺らしている。

 ポストに当たったデストのシュートや、枠を捉えられなかったメッシのシュートなど、バルセロナはいくつか決定機を逃した。しかし、仕上げはメッシ。イライクス・モリバとのワンツーでDFラインを突破する。シュートはGKに弾かれたが、こぼれ球を右足で押し込んで追加点を奪った。

 セビージャはバルセロナのハイプレスに苦しみ、試合の主導権を明け渡した。シュートを放てないまま前半を終えると、ハーフタイムに3枚替えを行った。63分までに3トップを総入れ替えて少し持ち直したが、最後までゴールネットを揺らせなかった。

「リスキーだった」バルセロナの3バック

「ボールがないときはプレッシャーをかけ、ワンオンワンを挑む。オフ・ザ・ボールがカギを握っていて、とても完璧なゲームだった」

 ロナルド・クーマン監督の言葉通り、バルセロナがセビージャを制圧した。一方でセビージャのフレン・ロペテギ監督は「私たちの対応は十分ではなかった」と振り返っている。セビージャは各所で行われる1対1で劣勢となり、試合の主導権を握れなかった。

 セビージャは直近のラ・リーガで5試合連続無失点。コパ・デル・レイ(スペイン国王杯)を含めると8試合連続で失点を許していなかった。堅守を誇るセビージャに対し、バルセロナは守備からリズムを作った。

「敵陣からプレッシャーをかけようと試みた。3バックとフルバック(セルジーニョ・デストとジョルディ・アルバ)を高い位置でプレーさせることで、セビージャを(自由に)プレーさせないことが容易になった」

 クーマン監督は、布陣を変更した狙いを試合後に明かしている。3バックは12月のレアル・バジャドリード戦やエイバル戦で戦った布陣だが、奇策の部類に入るだろう。「リスキーなシステムだった」と指揮官は試合を振り返ったが、リターンも大きかった。

メッシの労働とデンベレの自由

 リスクのあったバルセロナのハイプレスを成立させていたのはメッシの守備だった。

 メッシは守備を免除されることが多いが、この日は11人の労働者の1人として、前線の守備に参加した。アリバイ的なチェイスではなく、確実にパスコースを限定し、隙あらばボールを奪いに行っている。

 データサイト『Whoscored.com』によれば、タックル数が2回で、インターセプトが1回。ジエゴ・カルロスへのファウルでイエローカードをもらったのも、積極的なディフェンスの結果と言えるだろう。2つのゴールを生み出しただけでなく、ディフェンスでの貢献も光っていた。

 デンベレとメッシで相手の両センターバックを封じ、アンカーのフェルナンドに対してはペドリが対応。ジョアン・ジョルダンやイバン・ラキティッチが降りてきてもブスケッツやフレンキー・デ・ヨングがマークを離さなかった。

 メッシが守備に奔走することで3-5-2の布陣が成立し、デンベレは攻撃面で違いを生んでいた。グリーズマンではなくデンベレを起用したのは、深さを作るためだったようだ。メッシが中盤に降りることで自由に動き回るスペースを得たデンベレは、相手のセンターバックを困らせていた。

 この試合ではクーマン監督の奇策が奏功したが、水曜日に同じカードが控えていることを忘れてはならない。コパ・デル・レイ準決勝は1stレグでセビージャが勝利している。0-2で敗れたバルセロナは3点差以上つけて勝たなければいけない。

 メッシが5日間であの強度のプレーを180分続けられるかどうかは分からない。そして、策士ロペテギは何かしらの対策を講じてくるだろう。4週間の間に行われる3本勝負は、1勝1敗で第3戦へ進むこととなった。

(文:加藤健一)

【了】

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