欧州スーパーリーグを悪者にするな。被害者は誰か? 欧州サッカーに残された問題の本質【コラム】

2021年04月22日(Thu)12時06分配信

text by 加藤健一 photo Getty Images
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現地時間18日、欧州スーパーリーグ設立が発表された。大きな波紋を呼び、反対意見が各所から噴出。創設クラブとして参加を表明していたクラブが次々と不参加を決め、計画は暗礁に乗り上げた。ビッグクラブの暴挙を食い止めることはできたが、問題は残されたままである。(文:加藤健一)

ビッグクラブの構想はとん挫

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【写真:Getty Images】

 現地時間18日に発表された欧州スーパーリーグ(ESL)構想はわずか2日で暗礁に乗り上げた。20日はイングランドの6クラブが相次いで不参加を決め、21日にはアトレティコ・マドリードとイタリア勢がそれに続いた。残されたバルセロナとレアル・マドリードは立場を表明していないが、ESLはプロジェクトの再検討を表明している。

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 スーパーリーグ構想については、これまでも度々報道が出ており、短期間で公表までたどり着いたものではない。パリ・サンジェルマンやバイエルン・ミュンヘンといったビッグクラブが参加しなかったものの、ビッグクラブ間で継続的に議論されてきたプランだった。

「世界的なパンデミックが欧州サッカーの経済モデルの不安定さを加速させたことで、スーパーリーグの結成は生まれた」

「パンデミックは、欧州サッカーにピラミッド全体の利益のため、価値の向上とサポートの強化をすべく、戦略的なビジョンと持続可能な商業的アプローチが必要であることを示した」

 ESLは設立の経緯をこのように述べている。新型コロナウイルスの世界的な流行により、多くのリーグでは現在も無観客試合が続き、減収は避けられなくなった。財政的な問題を抱えているのはビッグクラブだけではない。

 ESLの会長を兼務するレアル・マドリードのフロレンティーノ・ペレス会長は、レアルはこの2シーズンで4億ユーロ(約480億円)もの減収が見込まれていることを、発表翌日に出演したテレビ番組で明かしている。ESL発足はその問題にアプローチするための解決策というわけだ。

スーパーリーグ発足表明の経緯

 ESL創設に反対したUEFAは、ESL創設発表の翌日にUEFAチャンピオンズリーグの改正案を可決している。24/25シーズンから施行されるという新方式では、参加クラブが現行の32クラブから36クラブに拡大することになる。

 ESL創設に対するカウンターのようにも見えるが、実態はその反対だ。16日時点で、ECA(欧州クラブ協会)とUEFAクラブ大会委員会の支持を受けたうえで、UEFAは新方式を可決している。CL新方式が決まったことで、ESL側が発足の発表に動いたという時系列となる。

「ここ数か月、欧州の大会の今後の形式について、ステークホルダーとの広範囲に及ぶ議論が行われている。サッカーピラミッド全体に高品質な試合やさらなる財源を提供する必要があるが、これらの協議によって提案された解決策が、根本的な問題解決にはならないと創設クラブは考えている」

 ESL発足時の声明からも、その経緯がうかがえる。ESL側がCL新方式への対抗策としてスーパーリーグ構想を発表したという経緯だと解釈できる。

UEFAの思惑と被害者

 多くのサポーター、現場で戦う選手やコーチングスタッフの熱意が、結果的にESLを一時停止へと動かした。計画は一旦とん挫した形となったが、これで一件落着とはならない。

 CLの新方式により、参加クラブは4つ拡大される。36チームが異なる10チームと1試合ずつ対戦し、上位8チームが決勝トーナメントに進む。9位~24位までのチームはホーム&アウェイのプレーオフを行い、勝利した8チームが、上位8チームとともに決勝トーナメントに参加する。

 プレーオフを経由して決勝まで進んだチームは、19試合を戦う。現行ルールではグループステージ6試合と、決勝トーナメント7試合で計13試合なので、6試合増加することとなる。本大会出場権をかけた予選に参加すれば、試合数はさらに多くなる。

 UEFAは2018年にUEFAネーションズリーグを創設している。設立が決まった当時のミシェル・プラティニ会長は「親善試合には誰も興味を持たない」と話し、インタナショナルマッチデーのほとんどを公式戦に充てるべく、リーグ戦の導入を推し進めた。

 当初のネーションズリーグは各インターナショナルマッチウィークに2試合が行われる形だったが、現在は3試合が行われることが多い。新型コロナウイルスで延期された試合を消化しなければならないという事情もあるが、選手の負担は明らかに増えている。選手は被害者である。

一石を投じたスーパーリーグ構想。問題の本質はどこに?

 選手の負担が増えるという点でみれば、ESLも同じ。ESLは20クラブが2グループに分かれて計18試合のリーグ戦を行う。各グループ4位と5位がプレーオフを行い、その勝者2チームと各グループ上位3チームが決勝トーナメントに進出。プレーオフを含めると試合数は25試合に上る。

 UEFAもESLも目的は同じで、コロナ禍で加速した収入源をどう補うのかというところである。UEFAは試合を増やすことで埋めようとしているが、それをESL「根本的な問題解決にはならない」としている。ペレス会長は「テレビの収入が増えないならば、解決法は魅力的な試合をより多く行うこととなる」と話したように、試合数を増やしたうえで、ビッグクラブ同士の試合を増やすという結論に達している。

 どちらの案でも、選手の負担は増えていく。ビッグクラブ同士の試合を増やしたとして、試合自体のクオリティが上がらなければ、サポーターの興味を引き付けることは難しい。

 若者が「気晴らしのためのフットボールではないプラットフォームを手にしている」というペレス会長の言葉は本質を突いているかもしれない。だが、提示した解決策は試合の質を上げることには繋がらない。9月から5月まで、週2試合のペースで試合をしていて、身体的も戦略的にも十分な準備ができるはずがない。

 ESL創設に乗り出したビッグクラブは、UEFAが推し進める施策に一石を投じた。UEFAはCL新方式の決定に際し、大会形式や財務的分配などの詳細は、年末までにさらなる決定がなされる可能性を残している。

 ESLだけを悪者にしてしまうと、問題は未解決のままとなる。フットボールは誰のものなのか。我々は問題の本質がどこにあるのかを見極めなければならない。

(文:加藤健一)

【了】

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