東京五輪が強行されている理由は誰もが分かっている。足りない五輪で響く選手たちの声【英国人の視点】

2021年07月27日(Tue)10時06分配信

text by ショーン・キャロル photo Getty Images
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「これがオリンピックだとは感じられない」



 スローテンポでおおむね暗めなセレモニーが観客に閉ざされた会場の中で執り行われる一方で、その数百メートル圏内には数千人が集まり、大会に対するそれぞれのスタンスに応じて少しでも雰囲気を味わおうとしたり開催への抗議を行ったりしていた。

 サッカーに関しても全く同じだ。空席の並ぶ空虚なスタジアムはピッチ上からもエネルギーを吸い取り、何もかもが平坦に感じられてしまう。

 岩渕真奈がカナダから豪快に奪った同点ゴールは札幌ドームの屋根を貫く轟音を生んでいただろうし、南アフリカ戦とメキシコ戦での久保建英のゴールも大音量に包まれていただろう。埼玉スタジアムのネットを揺らした堂安律のPKでテンションは最高潮に達し、爆発的な歓喜の光景が見られたに違いない。だが実際には、聞こえてきたのはブラーの『Song 2』と、選手たちとスタッフの叫び声だけが全てだった。

「観客がいないのは本当におかしな感じです。本当に」。7月24日に100m平泳ぎの競技を終えたあと、英国のアダム・ピーティーはそう話していた。

「それでも、精神的な部分でこれに合わせてやっていくしかない。どういう感じになるのか実際にやってみるまで分からなかった。これがオリンピックだとは感じられない。もちろん、今までと同じじゃない。そういう思いを全てコントロールして、大事な場面でパフォーマンスを発揮できるようにしていくしかない」

 新型コロナウイルスが世界を混乱に陥れたことは間違いない。ユーロ2020(欧州選手権)での、マスクも着けていない何万人ものファンが折り重なるように密集する光景は、ワクチンの摂取と普段どおりの生活を待ちわびる世界中の大多数の人々が見せている自粛の姿と対比すれば眉をひそめるようなものであったことも確かだ。

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