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岩渕真奈「日常は変えるべき」。五輪8強敗退で抱く危機感、日本女子サッカー界への提言【東京五輪】

text by 編集部 photo by JMPA

岩渕真奈
【写真:JMPA代表撮影】



 サッカー日本女子代表(なでしこジャパン)は30日、東京五輪の準々決勝でスウェーデン女子代表1-3で敗れた。なでしこジャパンの五輪はベスト8で終わった。

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 今大会で10番を背負ったFW岩渕真奈はこの結果を「妥当」であり「現在地」だと表現した。

「正直、オリンピックの予選を経験せずに、開催国で出場権を得て、このコロナ禍で本当に難しい部分はありましたけど、ベスト8が妥当というか、これ以上いくチャンスが今日なかったかと言われたら別にそうではないと思いますけど、いまいる自分たちの立ち位置というか、現在地かなと思います」

 5年前のリオデジャネイロ五輪はアジア予選で敗退し、本大会出場を逃していた。もし今大会もアジア予選から勝ち進まなければならなければ、東京で五輪の舞台に立てなかったかもしれない。

 なでしこジャパンがドイツで女子ワールドカップを制したのは10年前のこと。あれから時が経ち、アジアも含め世界の女子サッカー界の進歩は凄まじい。特に欧米各国の成長スピードは驚異的で、日本女子サッカー界は相対的に置いていかれる形になってしまった。それが岩渕の言う「現在地」だろう。

「日本のサッカーは『うまい』という部分はあるかもしれないですけど、もっと戦う部分だったり、ゴールに貪欲にいかなければいけない部分だったりは、やっぱりどこかで差はあるのかな、と。こういう大きい舞台で勝つことを目標とするのなら、本当に日頃から(高いレベルで)やることの大事さは、自分が(海外で)やってきて、こういう舞台を踏んだからこそ気づけたことなので、本当に日本のために頑張りたいなと思うのと、今後そういう貪欲な選手がもっともっと出てきたらいいなと思います」

 日本では今年9月から女子サッカー初のプロリーグである「WE.リーグ」が開幕する。プロ化されることで欧米に近い環境にはなる。だが、岩渕は「自分がこのタイミングで海外に出たように、海外に出て得るものって絶対にたくさんあると思うんですよ」と語る。日本女子サッカー界の「日常は変えるべき」という考えも持っている。

「もちろん日本の環境がよくなって、小さい女の子たちが目指す場ができるのは本当に素晴らしいことだと思いますけど、勝つために何が必要かというのを、本当にWE.リーグの皆さんもそうですし、各個人が考えて行動すべきだとは思います」

 日本では、男子サッカーが数十年前からセリエAやプレミアリーグなどを通して欧州のレベルの高さや最先端の戦術を知り、採り入れてきた。一方、女子サッカーでは海外のリーグや代表チームがどんなサッカーをしているのかに触れる機会が圧倒的に少ない。岩渕がプレーしているイングランド1部リーグの成長や、DF熊谷紗希が出場している欧州女子チャンピオンズリーグの質の高さを知る機会はほとんどなかった。

 当然、これからWE.リーグが急速に成長する可能性もある。だが、それでも岩渕が日本女子サッカー界の発展のために勧めるのは、成長意欲のある選手が欧米のトップレベルへ挑戦することだ。

「結局ボールを持っているだけではゴールが取れない。どこかで仕掛けなければいけない、どこかでチャンスを狙わなければいけない部分に関しては、本当に海外にいるからこそ思いますけど、外国人の選手って本当に貪欲なので。どこかでミスを恐れて…というのが日本人の悪いところかなと思うので、その部分は悔しいし、変えなければいけなかったですけど、変えられなかった部分かなと思います」

 もう一度、日本女子サッカー界が本気で頂点を狙うなら、「日常を変える」こと。それは女子サッカー界のトップレベルを知り、日常的に高いレベルで競争できる環境に身を置く選手を増やす、ということなのかもしれない。

 東京五輪でベスト4に入ったオーストラリア、スウェーデン、アメリカ、カナダの選手たちが普段どこでプレーしているか。女子サッカー界の進化、移り変わりは非常に早い。日本女子サッカー界は厳しい現実を突きつけられた。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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