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辛勝で大喜び…バルセロナは苦しい。それでも、アンス・ファティらの成長が加速する理由とは?【欧州CL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 本田千尋 photo by Getty Images

バルセロナは肥沃な土壌



 そしてファティがゴールを決めた直後は、ベンチメンバーも飛び出してきて大喜びの状態だった。もちろんルチェスク監督の手腕を考えれば決して侮れる相手ではないが、それでもキエフからゴールを奪ってもさほど騒ぎ立てず平然としているのがビッグクラブであり、本来のバルセロナだったはず。“新10番”が決勝点を決めた直後のチームの大袈裟なまでの喜びようが、かえって現在のバルセロナの苦しい状況を現わしていた。

 さらに守備面では、アラベス戦での失点の場面のように、被カウンター時のプレスが掛からないところがある。攻撃面でも、ボール奪取後に敵のカウンタープレスの網に掛かるところがあるなど、戦術面でも課題を残した試合だった。

 しかし、ファティのような若くて才能のある選手が急成長するのは、このようにチームが苦しい状況で迎えた際どい試合を乗り越えていった時なのかもしれない。もちろん若手の成長には、ある程度の時間は必要だ。

 しかし、アグエロのようなベテランが再び抜けて、誰かを頼ろうにも頼れない状況で、バルセロナの10番としての自覚と責任が、望むと望まざるとにかかわらずファティの中で強固なものとなっていったとしても不思議ではない。ガビやニコ、アレックス・バルデといった他の若手選手にとっても、同様のことが言えるだろう。その“自覚”は、本来は時間が掛かる成長のスピードを速める可能性がある。

 セルジ暫定監督時代は、抜き差しならない状況だ。ただ、それだけに、若手の成長にとっては肥沃な土壌でもあるのだ。

(文:本田千尋)

【了】

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