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辛勝で大喜び…バルセロナは苦しい。それでも、アンス・ファティらの成長が加速する理由とは?【欧州CL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 本田千尋 photo by Getty Images

窮地を救った新10番



 バルセロナの選手たちには動きに重さがあり、かえってキエフに決定機を創られた。23分には左サイドで複数でプレスを掛けてもボールを奪い切れずシュートまで持っていかれる。28分にはブスケッツが奪われてショートカウンターを喰らった。いずれもキエフの決定力不足に助けられた格好だ。

 後半に入っても敵のブロックを崩せず、58分にはキエフに鋭い連動で右サイドを抉られ、オレクサンドル・カラバエフに際どいシュートを打たれるなど、悪戦苦闘が続くバルセロナ。しかし、65分にガビに代えて今季初めてウスマン・デンベレが投入されたことで、縦の推進力は生まれた。

 だが、依然として決定機を創れず、セルジ暫定政権下での2戦連続ドローも現実味を帯びてきた頃、“新10番”が窮地を救う。

 70分、ミンゲサの右サイドからのグラウンダーのクロスが、相手DFの足に当たってアンス・ファティの目の前に転がった。19歳のアタッカーは迷わず右足を振り抜いて、ボールをゴールネットに突き刺す。この新10番の1点で辛うじてディナモ・キエフに勝利したバルセロナは、グループEで2位に浮上。決勝トーナメント進出に望みを繋いで、次節、3位のベンフィカとの“決戦”に臨むことになった。

 キエフでの勝ち星は、セルジ暫定政権下での初勝利となった。しかし、そもそものディナモ・キエフとの力関係を考えれば、喜んでばかりもいられないだろう。

 移籍市場専門サイト『transfermarkt』によると、両チームの市場価値は、およそ5倍の開きがある。2試合を残してこのグループE突破を決めたバイエルン・ミュンヘンは、第2節でキエフに5-0で勝利している。近年のバルセロナであれば、それぐらいの大差で勝利して然るべき相手だろう。

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