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新体制初陣で完封負け…なでしこジャパンが抱える重い課題。「アタッキングサードでの停滞感」を払拭するには?

text by 編集部 photo by JFA

長谷川唯
【写真提供:JFA】



【日本 0-2 アイスランド 国際親善試合】

 サッカー女子日本代表(なでしこジャパン)は現地25日、アイスランド女子代表と対戦して0-2で敗れた。

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 自らの指揮官としての初陣を黒星で終えた池田太監督は、「0−2という結果は非常に残念です。こちらに来て、短い準備の中で選手たちにいろいろと共有したことをトライしてもらうという意味では、ピッチでの取り組みが見られたことが収穫として残ったと思います」と試合を振り返った。

 積極的にボールを奪いにいく守備など、池田監督が選手たちに繰り返し要求してきた部分に関しては十分に見られた。うまく形がハマらずとも、ピッチ内で修正を図りながら守っていたが、それでもシンプルなロングボールを使った速攻から2失点。一方で、日本にはGKにセーブを強いるような明確な決定機はほとんどなかった。

 池田監督も「どうやって前進するかというところでは、選手には早い準備を求めていましたし、いいサポートの角度を意識して連続しようということで、相手陣に入るところくらいまではできたところもあったと思います」とビルドアップの局面には一定の評価を下す一方で、「その後のアタッキングサードでのちょっとした停滞感、フィニッシュまでつながるもう1つのところがまだまだだなというところが正直なところです」とも語る。

 確かにハーフウェーラインを越えるまではボールを運べるが、相手ペナルティエリア付近まで到達すると、アイスランドの高い壁にことごとく阻まれた。サイドを起点に近い距離のコンビネーションで崩そうとしても、どんどん狭いところに追い込まれてボールを失ったり、パスをミスしてしまったり。

 練習で意識していた味方をサポートする動きや3人目の動き出し、斜め方向へ刺すように攻撃のスイッチを入れるパスなども見られたが、どれも単発に終わって、なかなかプラスの連鎖が起こらなかった。

 右サイドで先発出場したMF成宮唯も「ハーフタイムでも監督から指示がありましたけど、ビルドアップでよくボールを持てているときに、ミドルゾーンまではしっかり運べて、いい形を作れるところが多かった、と。やっぱりバイタルエリアに入る最後の精度とクオリティ、そこの創造性というか、3人目を意識した動きであったり、前に関わる人数とか、アイデアというのが結構試合を通じて不足していたと思います」と攻撃面の不足を悔やんでいた。

「ゴールに迫る前までは良かったですが、最後の質は上げていかないと、『ゴール前までの崩しはよかったね』と終わる試合になると思うので。最後の質はコミュニケーションを取りつつ、みんなで同じ絵を描けるような攻撃をしていかないといけないかなと思います」

 そう成宮が語るように、「最後の質」を上げていくにはどうすればいいのだろうか。東京五輪までの前体制を知るMF長谷川唯は「今までは少しきれいにつなぎながらというところを意識していましたけど、裏に抜ける選手がどんどん出ていったりとか、それを狙うプレーというのは多く出ている」と違いを感じつつ、今後の進むべき道について次のように分析している。

「狙いは本当に共有できていて、それにチャレンジできたと思うんですけど、それによって逆に他の選択肢が少し減ってしまったりとかもあった。そこもしっかり、個人個人のところもそうですし、チームとしても落ち着くところと、チャンスで狙わなければいけないところの判断も全体で共有して話していきたいなと思っています」

 アイスランド戦は池田監督のもとで挑む初めての試合だった。ほぼ更地からのチーム作りで、今回がチーム初合流の選手もいる状態。そんな中で必要なのは「時間」ということだろうか。

 確かに「狙いは共有できている」という長谷川の言葉通り、選手たちには池田監督の掲げるチームコンセプトや体現したいプレーのイメージが刷り込まれている。練習でやっていた内容が、比較的忠実に試合の中で表れてもいた。

 次は個々が持っているプレーの感覚や特徴などをお互いに共有し、一瞬の判断材料として選択肢を増やしていく作業が必要になる。池田監督も「選手たちのプレーする意図や取り組みはよかった部分も確かにありました。あとは今後どう得点を奪うかというところに進んでいきたい」と、チーム作りを次の段階へ進めることを示唆していた。

 ぶっつけ本番に近かった状態から、1試合分の重要な知見を29日のオランダ女子代表戦に向けてどう活かしていくか。アイスランドよりも力のあるチームとの対戦にはなるが、攻撃面で「選択肢が少し減ってしまった」(長谷川)状態から進歩していることを期待したい。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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