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アーセナルに勝利をもたらしたアルテタ采配。またも退場で10人に、ピンチを救った男とは?【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

減らない退場者…



 この試合の展開を大きく変えたのが69分のマルティネッリの退場だ。

 マルティネッリが最後に触れたボールがサイドラインを割ってしまい、ウルブス側はスローインからのリスタートを狙った。その際にマルティネリはダニエル・ポデンセのスローインを腕で妨害、そしてボールを受けてアーセナル陣内へと攻め込んだチキーニョを後ろからのタックルで倒し、この一連の流れから2つのイエローカードを受けて退場となった。

 アーセナルは今節を含めて2022年に行われた公式戦6試合のうち、4試合で退場者が出ている。これは明らかな問題だ。

 現在のアーセナルは「スタメンイズベスト」の状態に近く、「誰が出ても強い」チームとは言い切れないだろう。マンチェスター・シティのように選手の数自体は少なくても、控え組含めて全選手がトップレベルというわけでもなければ、リバプールのように移籍市場での選手の入れ替えが少なく、各選手の戦術理解度が成熟しているわけでもない。

 実際、控え組を中心に臨んだFAカップ3回戦では、2部ノッティンガム・フォレストに枠内シュート0の完敗を喫している。

 なぜ、スタメンと控えの選手の差が顕著なのかというと、今季のアーセナルは欧州カップ戦に出場していないこともあり、試合に起用されている選手がある程度固定化されている。そのためローテーションを取り入れる必要がなく、控え選手は試合で出番を得ながらコンディションをあげるということができていない。これに加えてピエール・エメリク・オーバメヤンやカラム・チェンバースら5名を冬の移籍市場で放出したことでチームの選手層は明らかに薄くなった。

 こうした状況で退場者が続出していることは、重要な試合で主力に離脱者が出るリスクが高く、後々の自滅に繋がりかねない危険な状況だ。

 また、結果的に退場こそしていないが、マガリャンイスは61分に遅延行為によってイエローカードを貰っている。リードは1点、そして残りの30分以上を守り抜くことが求められているこの展開では、ファウル覚悟で相手を止めなければいけない場面がこの先にあるかもしれない。こうした状況でCBが不用意なイエローカードを貰うのは明らかに軽率だった。

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