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なぜ21歳のウクライナ人GKは軍入隊を決意したのか? 「契約を結ぶためハリコフへ行ったら、その日の朝に戦争が始まった」【コラム】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

「沈黙ではなく、声を上げ、アクションを」

ニキータ・フェドトフ
【写真:本人提供】



 祖国や愛する人々を理不尽な侵略から守る。そのための極めて強い覚悟が、言葉の端々から感じられた。だが、21歳と若く、将来有望なアスリートが夢を追いかけるのを諦めなければならず、明日の未来すらも保証されていない状況があっていいのだろうかと、深く考えさせられる。

 もし自分が祖国を侵略される立場に置かれた時、フェドトフのように覚悟を決められるだろうか。いつも世界のどこかで起きていて、テレビの中の出来事としか捉えられていなかった「戦争」が目の前にあって、悲惨な結末を想像できていたとしても……。

 ロシアとウクライナは現地3日に2度目の停戦交渉を行ったが、両者の主張の隔たりは埋まらなかった。その間にもロシア軍による攻撃や侵略行為は続いている。第二の都市ハリコフでは無差別砲撃などが行われているとの報道もある。

 もちろん犠牲者も増え続けている。ウクライナ政府は「正確な数字はわからない」として発表を撤回したが、一時は「民間人2000人以上が犠牲になった」と明らかにしていた。南部の交通の要衝ヘルソンがロシア軍に占領されたとの報道もあり、徐々に包囲網は狭まってきている。

 そんな中で「世界中の皆さんに、僕たちは強く、団結していて、この困難を乗り越えられるんだということを知ってもらいたい」と語るフェドトフは、改めて国際社会に支援を呼びかけた。まずは身近なところから助けるために、彼自身も行動を起こしている。

「僕とガールフレンドは共同で銀行口座を開設して、軍や地元の家族たちを支援するための資金を集めている。そこに集まったお金で爆撃による被害を防ぐためのシェルターや、避難生活を送るための快適な環境を整えたい。ぜひ日本でも広く拡散してほしい。そして、沈黙しているのではなく、声を上げ、アクションを起こしてもらいたい」

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