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アーセナルは本当に復調したのか? チェルシー撃破は実力か、偶然か。大量4ゴール奪取のキーマンは…【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

チェルシーに勝ったのは実力か、偶然か



 2022年となってから最多となる4ゴールを奪い、同じロンドンに本拠地を構えるライバルに快勝したアーセナル。この快勝により「チームが復調したから」と言うのは時期尚早だろう。

 と、いうのも対戦相手であるチェルシーは今季欧州カップ戦を戦っていないアーセナルと対照的に非常にタイトなスケジュールこなしている。4月だけで8試合が予定されており、毎週2試合という過密日程が続いているのだ。今節はターンオーバーを敢行し、チアゴ・シウバ、カイ・ハフェルツ、ジョルジーニョといった主力選手がベンチスタートとなっている

 加えて主力の怪我人も多くアントニオ・リュディガー(鼠径部の負傷)とマテオ・コバチッチ(足首の負傷)が今節はメンバー外となっている。また、主力選手の大半が昨夏に行われたユーロ2020(欧州選手権)とコパ・アメリカ(南米選手権)、もしくは今冬に行われたアフリカ・ネーションズカップに出場しており、選手たちの疲労はピークに達している。

 特に不在の影響を大きく感じたのがリュディガーだ。アーセナル戦ではマラング・サールがリュディガーの代わりに左CBに入ったが、リュディガーと比較するとカバーリングエリアの広さや対人戦の強さ、ビルドアップでの貢献度などほぼ全ての能力が劣っており、3失点目にも関与した。1失点目のきっかけとなったクリステンセンのバックパスのミスも、リュディガーのスピードがあればエンケティアにボールを回収されなかったかもしれない。彼の代役を務めるには実力と経験どちらも足りていないのは明らかだった。

 こうした背景を踏まえると現在のチェルシーのチーム状況はあまり良いとは言えない。試合後にトーマス・トゥヘル監督が「ミスが多すぎる。これでは試合に勝つことなどできない」と語ったように、2失点目以外の失点は本来であれば防げた可能性があった。逆に言えばアーセナルがチェルシーの隙をついてチャンスを見逃さなかったということでもある。

 チェルシーの自滅に近い形だったとはいえ、エンケティアやエルネニーといったシーズンの大半をベンチで過ごしていた選手たちの活躍が目立ったことは、怪我人続出などネガティブなニュースが続いたアーセナルにとって非常にポジティブな要素である。プレミアリーグも残すところ6試合。ショッキングな敗戦を喫した3位チェルシーを含め、来季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権争いの行方は全くわからない。
(文:安洋一郎)

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