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ドイツ代表の完成度はすさまじい。理不尽なまでのストロングポイントとは? イタリア代表を粉砕した2つの工夫【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

2つ目の工夫とは


 前述した「疑似カウンター」の他にもドイツ代表の攻撃の形はいくつも見られた。特にこの試合で効果的だったのが左サイドバックで先発出場していたダヴィド・ラウムの活かし方だ。

 攻撃時のドイツ代表の前線の選手はかなり流動的であり、場面ごとに立ち位置を入れ替えながらプレーしている。その中で彼らは「ペナルティエリアの幅より外側ではボールを持たない」ということを意識してプレーしていた。

 狭いエリアでも正確なパスでボールを繋げることができる彼らは、敢えてプレーエリアの幅を狭めることで、イタリアの守備陣を中央に密集させていた。相手の目線を中央に意識させることで大外に張っているサイドバックをフリーにさせるのだ。イタリア戦ではラウムを、攻撃を完結させたい場面で使い、彼のクロスから先制点と3点目の2得点が生まれている。

 最前線に入るヴェルナーは基本的にはサイドに流れているため、「ラウムのクロスに誰が合わせるのか」というのがこの攻撃の形の課題なのだが、先制点の場面では3列目からヨシュア・キミッヒが飛び出してきたことで攻撃が完結した。3点目もこぼれ球という形ではあったが、深さを取ったことでミュラーの前に良い形でボールが繋がった。

 今回のインターナショナルマッチウィーク前の時点でサイドバックのレギュラーは固定されていなかったが、この4試合でラウムとクロスターマンの2選手が猛アピールに成功した。これにより少なくともカタールワールドカップに向けたスタメンの構成はある程度固まった印象だ。イングランドやフランスなど他の優勝候補がチーム作りの段階で苦戦している中で、ドイツはかなりの完成度まで達している。優勝候補の一角に名乗りを挙げることは間違いないだろう。(文:安洋一郎)

【了】

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