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Jリーグ 1年前

プレーヤーは「代弁者」。現役Jリーグ選手の意識が変わるきっかけとプレーの変化【コラム】

シリーズ:コラム text by 岡田優希 photo by Getty Images

プロとしての存在意義と如実に表れた結果


【写真:Getty Images】



 私が本書を読み始めたのは、怪我をしていた7月下旬で、8月21日の明治安田生命J3リーグ第21節ガイナーレ鳥取戦から復帰をしたが、読み進めていくうちに自分の中でプレーをする意味合いが変化した。

 これまでは、チームの勝利のために自分のベストを尽くすことがサポーターやスポンサー、クラブに関係するすべての人に喜びを与えると考えていた。応援してくれるサポーター、応援されるプレーヤーというように、自分の存在とクラブ、サポーターの存在に一枚の壁があったのだ。

 しかし、プレーすることは「代弁」しているのだと考えてから、自分のプレーはクラブに関わる全ての人の存在を示すのだと考えるようになった。そう思うようになったことで、変化は結果にも表れるようになった。

 もちろん、自分の1人の力でゴールを奪うことはできず、そこまでボールを運んでくれるチームメイト、分析や采配をふるう監督、コーチのおかげである。ただ、結果として怪我で離脱する前の12試合では6ゴールだったが、本書を読み始め復帰してからは11試合で8ゴールと成績を伸ばしている。

 プロとしての存在意義が明確になったことで、頭がクリアになりそのエネルギーが足を動かしたことは間違いないと、胸を張って言える。

 本書は本場のウルトラスの生の声が記されている数少ない本である。

 なぜあそこまで熱狂し、試合で感情を爆発させるのか。私はウルトラスも「主役」であるからだと考えた。プレーヤーだけでなく、チャントやコール、手拍子、横断幕等様々な手段を駆使して、自分たちの信念を示す。

 そんなスタジアムだからこそ熱狂が生まれ、人々が熱中するフットボールが生まれる。そして本書を読めば、多種多様にフットボールを楽しむウルトラスの姿を通じて、自分なりのフットボールの楽しみ方を新たに作り出せると確信する。

 これからも私はプレーヤーとして、そして「代弁者」としてピッチでクラブを代表し、闘い続けたい。そして歓喜の瞬間を多くのサポーターと味わいたい。

(文:岡田優希)

岡田優希(おかだ・ゆうき)

1996年5月13日生まれ、神奈川県出身。18歳まで川崎フロンターレの育成組織に所属し、同期の三好康児や板倉滉とプレー。早稲田大学を経て2019年にFC町田ゼルビアに加入して3シーズン在籍。2022シーズンはテゲバジャーロ宮崎、2023シーズンはギラヴァンツ北九州でプレーする。

【了】

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