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勝敗を分けた“縦パス”。アーセナルがエバートンをパニックに陥れた方法とは【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

勝敗を分けた“1本の縦パス“

【写真:Getty Images】



 試合が動いたのは40分、オレクサンドル・ジンチェンコの縦パスに反応したブカヨ・サカがボックス内で反転し、右足でGKのニア上を打ち抜いた。

 この場合で注目をしたいのがジンチェンコのポジショニングだ。ポジション表記上は左SBだが、同選手は試合状況を読んでポジションを左サイド、中央、右サイドと頻繫に変えている。これはカウンターを受けない限り、エバートンのように自陣でブロックを敷くチーム相手では有効だ。ボールサイドで数的優位を作れるからである。

 このゴールが決まる直前、”神出鬼没な男”はハーフライン中央でボールを受けてからドリブルで3人の相手選手を剥がして右サイドへと侵入。そしてジンチェンコがサカへとパスを出した瞬間、エバートンのニール・モペイ、ゲイェ、オナナ、ドゥクレの4人はウクライナ代表DFを囲うようなポジションをとっていたが、誰も寄せることができていなかった。

 本来は逆サイドにいるはずの選手が右サイドに来たことで、エバートン守備陣はパニック状態に陥っていたのだ。彼らの中では誰がジンチェンコを見張るかどうかの共通意識がなく、中途半端な守備対応となったところの一瞬の隙で、ゴールへと繋がる縦パスを一刺しされた。

 この得点が勝敗を分けたと言っても過言ではない。というのも、ダイシが監督に就任してからのエバートンは先制点を奪えば全勝、逆に先制点を献上すれば全敗と結果がハッキリしている。攻撃的なオプションに限りのある今のエバートンには1点のリードを守り切る力はあっても、追いつき逆転する力はないのだ。

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