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なぜ支配率35%でバルセロナは勝てた?レアルを封じたシャビ監督の皮肉な自己矛盾【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

レアル・マドリードの良さを消す戦い方



 支配率35%という数字からも明らかな通り、この日のバルセロナはポゼッションに固執せず、自陣に人数を揃えレアル・マドリードを引きずり込んだ。本来ならマドリーが得意とする形を、バルセロナが採用したわけである。

 普段のバルセロナは選手間が広い状態でハイプレスをかけることで、とくに前線の選手が早い時間にガス欠となることが多い。しかしこの日は終始テンポを落とし続けたことでピッチに立つ全員が高い強度を保っており、マドリーにとって有効となり得るスペースを不用意に与えることがなかった。

 何度かサイドから斜めのボールを差し込まれてボックス内に侵入されたが、しっかりと人数を揃えているバルセロナはほとんど決定機を与えていない。事実、マドリーのシュート数は先述の通り13本となっていたが、枠内に飛んだものは1本もなく、実に7本のシュートがブロックされている。

 試合後にシャビ・エルナンデス監督は、上記のような戦い方は望んでおらず、もっとボールを支配する考えを持っていたと明らかにしていた。このコメントを素直に受け取れば、守備重視は“結果として”そうなったということだ。

 ただ、あくまで“結果として”だが、レバンドフスキやデンベレ、ペドリら前線の主力選手に欠場者が出ている中、この戦い方は理に適っていたように思う。守備力という自分たちの強みを最大限に発揮し、速攻を得意とするマドリーの強みを消すことができたのだから。結果を出すためには、伝統のポゼッションサッカーにこだわり続けず、こうした柔軟な戦い方があってもいいだろう。

 現役時代に守備的戦術を執ったチームに対し「アンチフットボール」と批判的なコメントを残していたシャビが、その守備的戦術でマドリーを下したのはなんとも皮肉なものだが…。

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