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なぜアーセナルは0-2から大逆転できたのか? 前半で冨安健洋が下げられた理由【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 編集部 photo by Getty Images

冨安健洋を前半で下げた意図とは?



 試合の潮目が変わった一つ目の出来事は、後半開始のタイミングで右SBの冨安健洋を下げて、ベン・ホワイトを投入したことだろう。アルテタのチームでは80分前後に右SBを入れ替えることが定石となっていたが、この試合では45分で両者を入れ替えている。

 今週のミッドウィークからUEFAヨーロッパリーグ(EL)決勝トーナメントが始まることを考慮してアルテタ監督はレギュラーのホワイトではなく、冨安をスタメンで起用したと考えられる。しかし、チームは試合早々に先制をされてしまい、追いつけないままハーフタイムを迎えた。

 今季、怪我人が続出していないタイミングで、アルテタ監督がリーグ戦で冨安を先発起用したのは、リバプール戦やマンチェスター・シティ戦など、モハメド・サラーやジャック・グリーリッシュといった強力なWG対策をしたい試合がほとんどだ。このことからもスペイン人指揮官は日本代表DFに対して守備面で絶大な信頼を寄せていることがわかる。

 その一方で攻撃面、特にサカやウーデゴールとの連係の部分で冨安はホワイトに劣る。それは両者のプレータイムで差がつく部分であり、よりウーデゴールらと共闘時間の長いホワイトの方が、連係が確立されているのは当然である。

 今節、冨安が起用されたのは先述した通り、ターンオーバーの一環であり、相手の左WG対策ではない。そのためより攻撃面で期待のできるホワイトをビハインド時に投入するのは必然的だった。

 ホワイトは冨安と比較するとより高い位置でボールに絡んだ。それは両者のヒートマップを見れば明らかで、冨安の立ち位置で最も濃くなっているのがミドルサードだったのに対して、ホワイトはファイナルサードが最も濃くなっている。実際に途中から試合に入ったこのイングランド代表DFは1点ビハインドの70分にペナルティーエリア内に侵入して、ゴールという最高の仕事を遂行した。アルテタ監督の通常よりも早い時間での右SBの交代は効果的だったと言えるだろう。

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