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遠藤航には何が足りなかった? 消えた持ち味の守備とプレミアリーグの洗礼【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

遠藤航に足りなかった“守備能力”



 守備面で物足りなかったのが、フィルターとしての能力不足だ。

 中盤の底であるアンカーのポジションには「ボール奪取」が求められる。アンカーで、このプレーが最も得意な選手はマンチェスター・ユナイテッドのカゼミーロだろうか。広い守備範囲とタイトな対人守備であらゆる局面でボールを奪い、そこからチャンスに繋げる。まさに“フィルター”として中盤に蓋をする役割を求められている。

 一方で、今節の遠藤航は相手に寄せてもボールを奪いきれずに突破を許す場面が目立った。5分の場面ではサンドロ・トナーリに寄せるも、一瞬の加速で簡単に剝がされて前線にパスを送られてしまった。

 52分には後ろ向きでボールを受けたトナーリに対して身体を寄せるも、背中でブロックされてしまいそのままドリブルでの前進を許した。直後の54分の場面では、ブルーノ・ギマランイスに寄せるも、こちらも背中で弾き飛ばされてしまい、またもドリブルでの持ち運びを許した。

 この3つのプレーで共通しているのが、対峙した選手たちがフィジカルとアジリティをハイレベルで兼ね備えていたことである。遠藤はスピードやフィジカルなどの身体能力に頼ってボール奪取する選手ではない。事前にドリブルやパスのコースを“予測”して、そこに目掛けて的確にタックルをする守備スタイルだ。

 トナーリやギマランイスらのアジリティが遠藤の予測を超えていた可能性がある。能力的に彼らにスピードで追いつけるわけではないため、この守備スタイルでは、読みが外れたときに個人の能力で補うことができない。そのためワンプレー目でボールを奪い切れなかった場合、遠藤個人で取り返すことが難しい。

 実際にこの試合で日本代表MFは一度もファウルを記録しなかった。これはファウルを与えなかったクリーンな守備ができていたというよりも、ファウルを与えることすら出来なかったと捉えるべきだろう。

 プレミアリーグ水準のフィジカルとアジリティに対応できる判断力は早急に必要となりそうだ。

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