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【アーセナル分析コラム】冨安健洋不在で浮き彫りになる問題。“ずさん”な守備と昇格組に苦しんだ理由とは

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

ジンチェンコ登場で改めて感じさせた“偽SB”の重要性


 16分や20分の場面がその代表例だろう。キヴィオルにパスを預けたところでバックパスしか選択肢がなく、20分にはルートンの2選手に囲まれてボールをロスト。57分の失点シーンの直前にもポーランド代表DFは相手にボールを奪われており、そこからのカウンターで勝ち越しゴールを決められている。

 この3つのシーンを見れば、ルートンの守備時のフォーメーションである[3-4-2-1]に対して、キヴィオルを外に張らせることは愚策だった。しかし、アルテタ監督からすれば、無理に偽SBをやらせてボールロストを連発することを恐れての決断だったのだろう。ジンチェンコをターンオーバーさせると決めた時点で、左SBの選択肢は実質的にキヴィオルしかおらず、仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。

 ただ、もう少しジンチェンコの投入を早めても良かったように思う。64分にウクライナ代表DFがピッチに登場した直後からビルドアップは大きく改善された。

 投入から1分足らずでジンチェンコは左SBの位置からそのまま右サイドに流れて、少ないタッチ数でパスを展開。プレスの逃げどころとして大いに機能して、いつも通りのアーセナルのビルドアップに戻った。

 キヴィオルとジンチェンコの保持時の貢献度の差はパス本数に表れており、64分間出場した前者が20本中16本成功させたのに対して、後者は29本中26本成功。短い出場時間だったウクライナ代表DFの方が多くボールに絡んでおり、改めてアーセナルにおける”偽SB”ができる選手の重要性が明らかとなった試合だった。

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