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【アーセナル分析コラム】自滅なのか? 躍進するアストン・ヴィラにやられた…。攻撃プランに影響を及ぼしたものとは

シリーズ:分析コラム text by 竹内快 photo by Getty Images

アーセナルのプランに影響を及ぼしたのは…



「今日は少し風が強かったように思う。間違って相手に渡してしまったボールが多かった」(アーセナル公式サイト)

 試合を通して、パスが短くて繋がらない、精度が低く相手に渡してしまうことが多かった印象だ。いつものアーセナルなら通せていたはずのパスが相手に奪われる。残念なことではあるが、これに関しては天候の問題でもあり仕方がないことだ。

 この「風」の問題はアーセナルの攻撃プランにも大きな影響を及ぼしている。

 注目したいのがアーセナルの「ロングボール数」。この試合では34本のロングボールを放っていたわけだが、この数字は直近5試合(リーグ戦)の中で最も少ない。第11節ニューカッスル戦では47本だったが、それ以降はどの試合も60本近い「ロングボール数」を記録していた(データサイト『SofaScore』参照)。風が強かったことで、通常よりもロングボールに対して消極的だったことが考えられる。

 パウ・トーレス、ディエゴ・カルロスを中心にしてヴィラはハイラインを敷いてきた。アーセナルとしてはその裏をもっと突いていきたかったはずだ。ヴィラのラインコントロールは厳格でしっかりと統制が取れていたが、何度かアーセナルの攻撃陣に裏抜けを許す場面があった。そのたびにヴィラ守備陣の素早い戻りとGKマルティネスのカバーに遭ってきたわけだが、裏を狙うロングボールの“数を増やせば”必然的にアーセナルのチャンスの数も増える。

 後半から積極的に裏抜けを狙う形を見せたアーセナルだったが、結果的にゴールに結びつくことは無かった。エメリ監督は両SBを交代して新鮮な戦力を投入することで守備の強度を維持。アーセナルがゴールへの活路を見出せそうになったタイミングで自分たちの弱点を隠し、しっかりと対策をしてきた。

 やはり今季のプレミアリーグも、その攻略は一筋縄ではいかない。ライバルが勝ち点を落としたタイミングで自分たちも決定力不足にあえぎ敗戦。アーセナルが20年ぶりに王座に君臨するためには、ハンドにより取り消されたカイ・ハフェルツのゴールについて議論する前に、自分たちの戦い方に目を向けて改善していく必要があるだろう。

(文:竹内快)

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