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【遠藤航・分析コラム】「完璧に近い出来」だった要因は? リバプールに安定感をもたらす遠藤の意識

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

遠藤航の守備が安定していた理由


 一方の守備に関しては非の打ち所がない完璧に近い出来だった。

 それを可能にしたのが「スペースを埋める意識」の高さだ。遠藤は周りの選手の動きに合わせて細かくポジションを変えることで、アンカーの周りに空きがちなスペースを事前に埋めていた。

 この意識は遠藤自身だけでなく、リバプールの守備の安定感にも繋がっている。

 右SBのトレント・アレクサンダー=アーノルドが、遠藤のポジションであるアンカーの位置に上がれば、代わりに最終ラインまで落ちて一時的にバックを形成。右CBのジャレル・クアンサーがドリブルで前方に持ち運んだ際には、彼が空けたスペースに降りてカウンターを受けた際のリスク管理を行うなど、周りの動きに合わせてのポジションの微調整を徹底していた。

 このポジション調整により、味方選手との距離感を一定に保つことが可能となる。これを行うことで、チームとしては避けたい「中盤が間延びする現象」や「あっさりとカウンターを食らうこと」が起きにくくなり、多くの局面でチームとしてセカンドボールが回収することができていた。

 90分のゴールシーンも遠藤のスペースを空けない意識が強く出た場面だった。モハメド・サラーとの相手選手との競り合いのこぼれ球に対して、自らの前方に誰もいないと見るや、迷わずルーズボールに対して全速力で詰めた。

 ここで遠藤が前に出ていなければ中盤に大きなスペースが生まれ、カウンターを食らいかねない場面だったが、自らが最終ラインに降りていた状況とは違って味方選手が後方にいたことから、迷わず出足の鋭い守備を行うことができた。

 この試合での遠藤はオフザボールでの判断が抜群だった。常にチームのサッカーが成立するように自らのポジションを調整しており、バランサーとして最高の役割を実行していた。

 試合後にユルゲン・クロップ監督も「彼がどれほど良いかを示すのに少し時間がかかったが、今ではそれを見ることができて本当にうれしい」と語るなど、遠藤は着実にプレミアリーグへ適応している。1月から2月にかけて最大1ヶ月ほどアジアカップで離脱する可能性が高いが、このパフォーマンスを維持することができれば、リバプールで絶対的なポジションを確立することができるかもしれない。

(文:安洋一郎)

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