スペースがない。それでも久保建英は…
この試合のソシエダは、ハイプレスのチームだった。全体を押し上げながら、オヤルサバルとB・メンデスがGKにまで猛烈プレス。たまらずクリアしたボールを、フレッシュなソシエダの選手が敵陣で回収し、素早く右サイドに展開した。
ここで久保がボールを受け、対峙する相手とタイミングをずらして一気に抜き去り、クロスかシュートを放つ。敵陣でボールを渡すと必ず攻撃をやり切ってくれる背番号14の背中は、開始15分の時点で既に眩しかった。
プレスからのショートカウンターが機能していた一方、この日のソシエダは、ビルドアップに苦労した。ビルバオの4-4-2ブロックが、それほど堅固だったのである。プレス意識の強い右サイドハーフ(FWイニャキ・ウィリアムズ)の初期位置が高くなっていたことで、ソシエダはなんとか左サイドのプレス回避に活路を見出すが、久保のいる右サイドからはほとんど前進できない展開となった。
自分のいるサイドにスペースが無い。それでも、いや、だからこそ、前半の久保は輝いていた。
圧倒的なコントロールスキルによって、狭いスペースで後ろ向きで受けても、B・メンデスやオヤルサバルと繋がりながら、ボールを失わずにファウルをもらう。前向きで受ければ瞬間的に相手と正対し、対峙者を動けなくした上で、ボールを前進させる最善手を打つ。ビルドアップに苦しむチームの中で、久保は、右サイドの保持の安定に大きく貢献していた。
右サイドの保持を安定させ、決定機を創出し続ける。まさに、“手が付けられない”状態の久保。前半、このような覚醒状態に入った理由は2つある。