フットボールチャンネル

コラム 7か月前

父の死、鬱、がん…。「恐れる」のをやめたアチェルビの軌跡。「サッカーができない」インテルのおじさんを救ったもの【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

二人の間で約束された無言の誓いを果たすために

アチェルビ
【写真:Getty Images】

 20/21シーズンには、CLにも初めて出場する。32歳だった。2022年夏には、その前年に首都ローマのクラブから引き抜かれたシモーネ・インザーギの後を追うように、インテルに移籍。ラツィオ時代の恩師、インザーギの信頼は変わらず、35歳の年齢を感じさせない働きぶりだった。

 1年目には、マンチェスター・シティとのCL決勝で、アーリング・ハーランドを完全に封じ込んだ。試合には0-1と敗れたものの、12歳年下の “規格外の怪物 ”に仕事をさせず、世界を驚かせた。昨季は、スクデット制覇を初経験。優勝パレードでは、味わいのあるサルサダンスを披露して、チームメイトの笑いを誘った。

 アチェルビには体全体に8カ所にもわたってタトゥーがある。その一つは、ブラジル人小説家、パウロ・コエーリョによる一節が刻まれている。「ある日、目覚めたときには、ずっと夢見ていたことをする時間はもう残されていない。やるのは今だ」。まるでこの言葉を体現するかのように、アチェルビは、一瞬一瞬を噛みしめるように生きている。

 5月31日、パリ・サンジェルマン(PSG)とのCLファイナルを迎える。アチェルビが、試合前に両腕を頭上に掲げ、両人指し指を天に突き上げるパフォーマンスは、亡き父に向けられたものだ。最愛の父は、熱狂的なインテリスタだった。父のために、青と黒のユニフォームを纏って欧州の頂きを征服することは、二人の間で約束された無言の誓いなのかもしれない。

(文:佐藤徳和)

セリエAを観るならDMM×DAZNホーダイに今すぐ登録

【関連記事】
セリエA時代の中田英寿も被害に…。欧州日本人選手を干した歴代監督6人
98年、中田英寿。激動の時代、ナカタはなぜ至高の活躍を見せ急速に引退へと向かったのか【セリエA日本人選手の記憶】
美しすぎて胸キュン!? 美女サッカー選手。まるでモデルな女子選手たち

【了】
1 2 3 4 5 6

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!