フットボールチャンネル

コラム 6か月前

プレミア王者を蹴散らした三笘薫のゴールの秘訣。芸術的なプレーを生み出す独特な股関節の「ひとひねり」【動作分析コラム】

シリーズ:動作分析コラム text by 三浦哲哉 photo by Getty Images

カットインや反転時の“沈み込む”動作

「サッカー フィジカルのプレーモデル」 117ページ
【写真:「サッカー フィジカルのプレーモデル」117ページより抜粋】

 三笘のようなトップレベルの選手は、方向転換のタイミングでも良質な股関節の「ひとひねり」が参加します。少し遡りますが、2022/23シーズン、第21節のレスター・シティ戦。左サイドでの高速カットインから右足で決めた鮮やかなゴールは、印象に残っている方も多いのではないでしょうか。

【動画】ブライトンvsレスター・シティ 三笘のカットインシュート


参照元:X

 スピードに乗った状態からのカットインが鋭い選手は、上半身の姿勢を保持しながらグッと沈み込んで外脚(左)を着地する際に、つま先が若干内側(進行方向側)に向くのが特徴的です。股関節の内旋が連動することで、上半身の向きを変えながらの横方向へのターンがスムーズになり、そこから並行移動するように加速していく動きになります。

 三笘は、左側のエリアからファーサイドを狙った右脚でのコントロールショットの精度も高く、インパクトの直前から蹴り足の股関節をクルッと「外旋」させて内側に振り抜くことで、インサイドで内巻きのカーブをかけたボールを蹴る形を得意としています。

 左サイドでパスを受けるシーンでは、懐の深さを活かして相手の足の届かないところにボールを置く技術や、逆を取るような動きも巧みですが、そのままダイレクトでタッチしながら縦方向にかわしていくプレーも多くあります。

 凱旋試合となった、2024年夏のブライトン・ジャパンツアーでの東京ヴェルディ戦。自陣に身体を向けた状態でパスを受けた三笘は、右足の踵の内側を使ったボールタッチと同時にクルッとターンをして、相手を剥がして加速していきます。

【動画】ブライトンvs東京ヴェルディ 三笘の反転


参照元:X

 180度の反転では、クッと沈み込んでステップを刻みながら上半身の向きを変えていく必要があり、両側の股関節回旋の連動がポイントになります。三笘の場合、素早い反転からの鋭い加速、という連続的な動きになっています。

 サッカーは競技特性上、減速や加速、方向転換、守備対応などで重心を下げる動きが多くなりますが、三笘のように沈み込んだ体勢でも股関節の自由度を保てることは、低重心位でのプレーのスムーズさにつながってきます。

 三笘の破格のパフォーマンスついて3回に渡って解説してきましたが、プレー映像を見るたびにその華麗な身のこなしについつい見惚れてしまいます。身体動作の「芸術性」や「美」を感じることができ、また言語化して残しておきたくなるような稀有な選手の一人です。

(文:三浦哲哉)

書籍情報

『サッカーフィジカルのプレーモデル』

三浦哲哉 著、須佐徹太郎 監修
定価:2,310円(本体2,100円+税)
これまでになかったサッカー選手のための自重をコントロールする「基礎体力」の型
世界で活躍するトップ・オブ・トップのサッカー選手の動作的特徴として、「スプリント」「減速・加速」「方向転換」の速さが挙げられる。それらを支えているのが、「弾むバネ」「沈むバネ」「しなるバネ」の3つのバネである。また、身体的特徴として、「上半身の姿勢の良さ」「腹~腰回り、下腹部の筋群の発達」「自由度の高い股関節」がある。本書では、現代サッカーを制するために必要不可欠な3つのバネの作り方を中心に、中学生年代から大学生年代かつプロ選手まで適用できる、これまでになかったサッカー選手のための自重をコントロールする「基礎体力」の型を提示する。

プレミアリーグを観るならU-NEXTに今すぐ登録


【関連記事】
三笘薫の順位は? 欧州日本人、最新の高額年俸ランキング
【動画】三笘薫、ブライトンでの月間最優秀ゴール
「放置」が“WB”三笘薫を輝かせる? サッカー日本代表CBはサポート不要

【了】
1 2 3 4 5

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!