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コラム 6か月前

「ダントツで上手い」伊東純也のクロスの秘密。ピッチに七色の虹をかける2種類のキックの「型」【動作分析コラム】

シリーズ:動作分析コラム text by 三浦哲哉 photo by Getty Images

キック動作で重要な「二重振り子」と「骨盤の回旋」

 サッカーのキック動作では、スイングする蹴り足は、股関節と膝を支点にした「二重振り子」と呼ばれる、身体の中心側から順番に脚が勢いよく振り出されてくる動きをします。キックの上手い選手ほど、蹴り足全体をちょうどしなりの効いた“ムチ”のように使うことで、強いボールを蹴ることができます。

 サイドからのクロスは、縦方向に助走しながら中央めがけてアウトスイングのカーブボールを蹴っていくのが基本になります。そのため、ちょうど前方へのスイングにあわせて蹴り足側(右)の骨盤が前に出ていくような形で、水平方向(左回旋)の動きを連動させてボールインパクトで捻る力を加えていく必要があります。

 私は、伊東のようなクロスを蹴るために最も重要となるこの一連の動きを、「骨盤の回旋と連動して、蹴り足を内側に振り抜く」と表現していますが、体幹と骨盤の安定性や捻る力に寄与する、腹〜腰回り・下腹部の筋群と、両側の股関節の協調がキーポイントになります。

 さらには、クロスを蹴る場合、①短い助走と②スピードに乗った状態では、軸足の使い方と蹴り足を振り抜く角度が変わってきます。伊東は、この両方の局面での身体の使い方がダントツで上手いため、精度と球速を兼ね備えた多彩なクロスボールを蹴ることが可能になるのです。

【動画 短い助走からのクロス】

参照元:YouTube

 ①の短い距離のアプローチからのクロスでは、軸足を踏み込んだあとに股関節を伸ばしていく「起こし回転」様の動きによって、身体が前上方に起き上がる力がインパクトに加わります。軸足の股関節のスムーズな「内旋」によって誘導される骨盤の回旋にあわせて、蹴り足は内側にスパッと振り抜かれるため、フォロースルーからのフィニッシュは軸足がスッと伸びた状態で蹴り足が高く上がったシルエットになります。

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