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コラム 6か月前

「ダントツで上手い」伊東純也のクロスの秘密。ピッチに七色の虹をかける2種類のキックの「型」【動作分析コラム】

シリーズ:動作分析コラム text by 三浦哲哉 photo by Getty Images

キックの引き出しが多い。「くの字」に折りたたむ動きを活用した蹴り方

【動画 日本代表vs中国代表 クロスでのアシスト】


参照元:X

 このシーンは、踏み込んだ軸足をちょうどジャンプするように地面から外して、足元寄りのボールをすくいあげるようにして上手くミートさせています。さらには、いわゆる「上半身を被せる」形で、股関節を支点にして身体を「くの字」に折りたたむ動きを、蹴り足のインパクトに参加させているのです。

 サッカーは競技特性上、プレー中に必ずしも自分の理想的な形ばかりでキックができるわけではありません。伊東のように、状況に応じて蹴り方を変化させる引き出しを多く持っているのは、キックの名手たちの共通点でもあります。

 伊東と同学年になる1992年生まれの選手は「プラチナ世代」と呼ばれ、19歳でドイツの名門バイエルン・ミュンヘンに移籍した宇佐美貴史を筆頭に、宮市亮、柴崎岳、遠藤航、といった若い時代から活躍した逸材が揃っています。大学サッカー経由でも、武藤嘉紀や仲川輝人、車屋紳太郎といった選手たちが、後に代表キャップを記録しています。

 幸運にも、私は、2014年のデンソーカップサッカー・第11回大学日韓定期戦に臨む全日本大学選抜チームで、短い期間ながら当時、神奈川大学で大活躍していた伊東と共に日の丸をつけて戦う機会がありました。スピード感あふれるプレーの素晴らしさはもちろんのこと、端正なマスクがクシャっと崩れる、はにかむような笑顔も素敵でした。

 また、朴訥とした語り口ながら、しっかり目を見て自分の言葉で話をする選手でした。今になって振り返ると、その透き通った瞳の奥には、ゴールへの道標となる鮮やかな弧を描いたクロスボールと同様に、自身の光り輝くキャリアへの架け橋も見えていたような気がしてなりません。

 ひとたびピッチを離れると、練習や試合でピンと張り詰めた緊張の糸をしっかりと緩めるようにリラックスして、自然体で過ごしていた姿も印象に残っています。キャリアを通して長期離脱を強いられるような大きなケガをしているイメージのない選手ですが、日々のコンディション管理はもちろん、オンとオフの切り替えの早さも、リカバリー能力の高さにつながっているのでしょう。

 攻撃から守備への切り替えのタイミングでの素早いプレスバックや、長い距離をスプリントしてカウンターアタックを独力で阻止するような伊東のプレーも、私は大好きです。白金色に輝く髪をなびかせながらチームのために懸命に走り抜く姿こそが、「稲妻」のように多くファンの心を打つのではないでしょうか。

(文:三浦哲哉)

書籍情報

『サッカーフィジカルのプレーモデル』

三浦哲哉 著、須佐徹太郎 監修
定価:2,310円(本体2,100円+税)
これまでになかったサッカー選手のための自重をコントロールする「基礎体力」の型
世界で活躍するトップ・オブ・トップのサッカー選手の動作的特徴として、「スプリント」「減速・加速」「方向転換」の速さが挙げられる。それらを支えているのが、「弾むバネ」「沈むバネ」「しなるバネ」の3つのバネである。また、身体的特徴として、「上半身の姿勢の良さ」「腹~腰回り、下腹部の筋群の発達」「自由度の高い股関節」がある。本書では、現代サッカーを制するために必要不可欠な3つのバネの作り方を中心に、中学生年代から大学生年代かつプロ選手まで適用できる、これまでになかったサッカー選手のための自重をコントロールする「基礎体力」の型を提示する。

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【了】
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