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コラム 5か月前

パルマの新監督に大抜擢。29歳のカルロス・クエスタとは何者なのか。アーセナルにも認められた才能の原点とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

なぜクエスタなのか。「彼は若い監督だが…」

「今回、我々は大きく2つの観点から検討した。1つは“システム全体”に関わる広い視点。我々スポーツディレクターやクラブはよく“プロジェクト”という言葉を使うが、この言葉はやや濫用されがちだ。というのも、昨季だけでもセリエAにおいて監督の約半数がシーズン途中で退任しており、我々もそのような不健全なサイクルに加担してきた。

 イタリアにおける監督の平均在任期間は欧州主要リーグの中でも最も短く、平均してわずか300日余り。これは、本来数年単位の“プロジェクト”であるはずのものが、ほとんど1シーズン以内に打ち切られている現状を物語っている。

 我々は何かを変える必要があると感じた。監督とは、クラブの構造的成長において“不可欠な要素”であり、“核となる存在”で、“根幹をなす人物”であるという本来の考え方を取り戻す必要があると考えた」

 では、なぜクエスタという人物だったのか。

「彼は若い監督だが、すでに3つの異なる国での経験がある。ここ数年はアーセナルでアルテタのスタッフとして、トップチームで仕事をし、また育成部門での経験もある。これは我々にとって、クラブ文化を築くという考え方において極めて重要なことだ。

 野心的であり、若い。これは年齢的な事実だが、私がカルロスについて非常に印象を受けたのは、彼がどれほど内面的にしっかりしているかという点である。つまり、彼の若さとは対照的に、どれほど多くの中身を持っているかということだ」

 年齢ではなく、経験値と内面的な素晴らしさによって、選んだことを強調している。そのクエスタは、会見で「イタリア語がうまく話せないことがあるかもしれないが、その点についてお詫びしたい」と述べたが、彼が話すイタリア語は完璧に近かった。

 スペイン語圏の人たちが、スペイン語と同じロマンス諸語に属するイタリア語を修得する難易度は高くないが、スペイン語圏特有のアクセントが取れないことが非常に多い。だが、クエスタが話すイタリア語には訛りはほとんどなかった。ユーヴェ下部組織での2年間に積み重ねた相当な努力の成果だろう。6カ国語を操るのは、多国籍チームのパルマでは大きなアドバンテージだ。会見での振る舞いも堂々としたもので、ベテラン記者からの質問にも臆することなく答えた。

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