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コラム 5か月前

パルマの新監督に大抜擢。29歳のカルロス・クエスタとは何者なのか。アーセナルにも認められた才能の原点とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

「今のサッカーにおいては、完全である必要がある」の意味

「このようなチャンスが訪れるとは、正直なところ、全く予想していなかった。私はアーセナルでの仕事に集中していて、本当に幸せだった。だが、この機会が訪れた瞬間、それが“正しいものだ”と感じた。人生では、予期せぬチャンスが訪れることがある。何か別のことに集中しているときに、そういう機会が来たりするものだ」

 もはや、欧州サッカー界において、20代の人物が、チームの指揮官に任命されることは驚きではない。28歳でホッフェンハイムの監督に選ばれ、ブンデスリーガ史上最年少指揮官となり、その後、バイエルン・ミュンヘンを経て、ドイツ代表監督にまで登りつめたユリアン・ナーゲルスマンの成功例を見れば、若さが障害とはならないことは実証されている。

 では、どのようなチームを築き上げるのか。

「私は特定のポジションが他より勝っているとは言いたくない。それは意志の問題ではなく、“信念”の問題だ。今のサッカーにおいては、完全である必要がある。必要な時には低いブロックで守り、高い位置でプレッシングをかけ、スペースがあるときもないときも攻撃の仕方を知っていなければならない。

 もちろん、一定の好みはあるが、私たちはあらゆるコンテクストに対応できる解決策を持つチームになりたいと思っている。選手たちのポテンシャルを最大限に活かしていきたい。なぜなら、最終的に攻撃するのも11人、守備をするのも11人だからだ。今のサッカーでは、攻撃する時も守備をする時も“一つのチーム”だ。それがこれからのあり方だ」

 パルマは、24/25シーズンのセリエA開幕時に20チームで最も若いチームであった。平均年齢は23歳と299日。多くの選手は2000年代の生まれだ。間もなく30歳を迎える指揮官の年齢が障壁とはならないだろう。

 それでは経験はどうか? すでに10年以上の指導キャリアがあり、立派な実績を誇る。唯一の懸念材料はトップチームを指揮した経験がないことだろう。しかし、クエスタは若さを武器に、一心不乱に突き進み、自らの夢を掴み取った。10代の頃に自ら売り込んだバイタリティーは、そういった経験不足を補ってくれるはずだ。

 最後に、パルマの日本代表GK鈴木彩艶の動向について、お伝えしよう。24/25シーズンのセンセーショナルな活躍により、シーズン中から、ビッグクラブからの関心が噂されてきた。これまで、移籍先候補には、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、ミラン、ナポリ、さらにはトッテナムが挙がっている。しかし、パルマはもう1シーズン、鈴木をクラブに留めたい意向を強めているようだ。

 21歳FWアンジェ=ヨアン・ボニーや18歳DFジョヴァンニ・レオーニなどが、移籍の可能性が強まる中で、鈴木に限っては、売却はないと現地メディアは報じている。専門メディア『Parma Today』は、「スズキは、パルマ“宝石店”における最も輝く逸品の一つであり、“(カイル・)クラウゼ会長の銀器コレクション”の中でも際立った存在である。そのため、複数のオファーが届くことになるだろう」と伝えている。オファーは届くが、移籍交渉には応じないとの見方だ。

 しかし、もし仮に、移籍市場の早い段階で「断れないような高額の移籍金」が提示されれば、クラブが翻意する可能性もある。メルカートが閉幕するまで、鈴木の去就には目が離せない。

(文:佐藤徳和)

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【了】

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