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コラム 5か月前

「逃げたい、楽になりたい」そんな福田翔生が「生きてきてよかった」と思えたとき。「おかげで僕はいま幸せ」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「お互いの夢もあるので」家族の反応は対照的だった

「お互いにJ1の選手として、J1の舞台で戦うことにすごく意味があると思っています。特に翔生はJFLからJ3とずっと苦労してきたので、その分、僕もめちゃくちゃうれしかったですね」

 この時点で2人の脳裏には、舞台をレモンガススタジアム平塚に変えて再び対峙する、10月3日のJ1リーグ第33節が共有されていた。しかし、福田のブレンビー移籍決定とともに状況は一変した。

「正直に言えば、両親や姉ちゃん、双子の弟の凌生はめちゃめちゃ寂しがっていました」

 日本と北欧のデンマークとで離ればなれになる状況に対する家族の反応を、苦笑いしながら振り返った福田は、ここでも湧矢だけが違った言葉をかけてくれたと明かしている。

「兄ちゃんはやはり一緒にプロでやってきた仲なので、僕には『チャンスがあるなら行ってこい』と。さらに『お前なら絶対にできるから。とにかく翔生らしく楽しんでこい』と言ってもらいました。もう一度兄弟対決がしたかったけど、お互いの夢もあるので、いつかどこかでまた対戦できたらと思います」

 福田によれば、今シーズンに入って湘南のファン・サポーターから「僕のおかげで頑張れている、と言ってくださる方がすごく増えた」という。サッカー界でも稀有なシンデレラストーリーだけではない。何度も逆境に遇っても絶対に向かず、夢をかなえ続けた福田の人生が周囲を勇気づけた証といっていい。

「サッカーに限らず、仕事や勉強、人間関係など生きていれば必ず辛いことがあると思います。逃げたくなるようなときもあるし、何で自分だけがこんなに辛い思いをするのか、と感じるときもある。でも、僕は苦しまずして成功は絶対にないと思っています。頑張っていたら、誰かがどこかで必ず必要としてくれるんです」

 福田の言葉通りに、今度はブレンビーに必要とされた。5シーズンぶりの優勝を目指すスーペルリーガだけでなく、予選から出場するUEFAヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)で必要な戦力として海を渡った。苦戦が続くシーズン途中で離れる湘南への熱い思いとともに、福田は覚悟と決意を新たにしている。

「ブレンビー側の熱意がすごく伝わってきて、どうしても僕が欲しいと言ってくれたので今回の決断をさせていただきました。それでも僕はこれからもずっと、命をかけられるチームと思ってきた湘南を応援し続けます。そして僕自身は、これからも誰かに希望を与え続けられるような選手を目指していきます」

 ブレンビーでも福田は湘南時代に引き続いて「19番」を背負う。新たな戦いは日本時間21日未明に、ホームのブレンビー・スタディオンに、シルケボーを迎えるスーペルリーガ開幕戦から幕を開ける。

(取材・文:藤江直人)

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