「それでも通す自信を今の僕は持っています」
「最初は(ナ・)サンホを狙ったんですけど、僕が前半にヘンリーに何本か蹴っていたので、相手サイドバックが動くのが速かった。それを見て、蹴る寸前に(中央にいた)ヘンリーに蹴ろうと判断を変えたんです。モーションがロングボールを蹴る形になっていたので、ヘンリーに優しいボールはムリだった。それで低弾道のちょっと”愛のない”パスになってしまったんですけど、『とりあえず頼む』という感じでしたね」とキャプテンは苦笑したが、託した願いを望月と藤尾がしっかりとゴールにつなげてくれたのだ。
昌子が守備陣の大黒柱だというのは周知の事実だが、攻撃の起点となるパス出しができるのも大きな強み。特にこの日は望月へのサイドチェンジを数多く出したことで、京都守備陣のバランスが微妙に崩れ、意表を突く決勝点弾のシーンにつながっている。
「僕はできるだけ(攻撃の)手助けをしたいと思ってる。自分がドリブルで何人も抜くとかいうのは現実的ではないし、ショートパスも引っかかると難しい。サイドチェンジも案外技術がいるんですけど、それでも通す自信を今の僕は持っています」と本人も目を輝かせていたが、昌子は30代になっても個の能力に磨きをかけ、成長し続けている。それは特筆すべき点ではないか。
改めて彼のキャリアを振り返ってみると、トゥールーズ時代にリーグ・ドゥ降格を経験したり、大ケガで長期離脱を強いられたり、2023年に復帰した鹿島で出番を失ったりと、さまざまな紆余曲折があった。
しかし、今季の町田ではリーグ戦全試合フル出場と本当に好調を維持している。それが黒田監督やチームメートにとっての大きな安心材料になっているのは間違いない。もちろん今回、ボランチとして大仕事を見せた中山の存在も大きかったが、ここから町田が天皇杯、J1、ACLEで勝ち続けていくためにも、背番号3が高値安定のパフォーマンスを維持していくことが極めて重要なのである。
京都を撃破し、1つの関門を突破した町田。けれども3日後の10日にはJ1首位を走るヴィッセル神戸との上位対決が待っている。
「神戸さんの王者たる風格、試合の運び方、1シーズン通した戦い方っていうのはやっぱり素晴らしいものがある。そこはリスペクトはしてますけど、僕らも負けると9ポイント離れてしまう。3日で回復して、しっかりやりたいなと思います」と昌子は語気を強めたが、まさに今が2025年の町田の成否を大きく左右する重要局面だ。今回の京都戦で示した攻撃の起点となる能力、望月ら若手を生かす力も駆使して、首位撃破のけん引役になってほしいものである。
(取材・文:元川悦子)
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