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コラム 4か月前

イタリアで立て続けに起きる悲劇。SPALがついに“消滅”へ。セリエA経験もあるクラブが、地獄へと落ちた原因は【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

SPALの名は使用できず。新クラブとして再出発

 2005年には、『ペトルッチ規定』により、当時所属していたセリエC1(当時の3部リーグ)より1つ下のリーグ、セリエC2(当時の4部リーグ)に登録し、再出発することができた。2012年は、NOIF(イタリア・サッカー連盟による国内組織規定)第52条3項を活用し、セリエDに登録可能となった。これも地域リーグではなく、全国規模のセミプロリーグからの再出発を許される特例だった。

 しかし、2014年に『ペトルッチ規定』が廃止されたため、過去2回のような救済措置は行われない。セリエCのクラブが不参加となった場合は、2つ下のカテゴリーからの仕切り直しが新規定により決まっている。すなわち、エッチェッレンツァから、SPALのDNAを受け継ぐクラブはリスタートすることとなった。

 また、SPALの名称は、商標が旧クラブに属しているため、使用することはできない。クラブの新しい名称は『アルス・エト・ラボール・フェッラーラ』となった。だが、サポーターの心に刻まれたクラブの名は、未来永劫、SPALであり続ける。

 クラブはアマチュアリーグでの登録となるが、クラブの象徴的存在はこれからも健在だ。16/17シーズンのセリエB優勝の立役者、ミルコ・アンテヌッチが、現役引退を表明し、新クラブのスポーツディレクターに就任した。

 バーリからの4シーズンを経て、2023年夏にSPALへ復帰。昨シーズンは、40歳ながら11ゴールをマークし、衰えぬ実力を示した。新クラブにとっても、サポーターにとっても頼りになる存在となるだろう。

 新クラブ再建の中心人物は、アルゼンチン人の51歳、フアン・マルティン・モリナーリ。銀行・金融業界出身の実業家で、フェッラーラ市が提示した3年間の投資計画を遂行するために必要な資金を用意したという。

 これまでにもイタリア・サッカー界との関わりを持ち、2024年夏には、ペルージャ・カルチョを買収したグループの一員として名を連ねた。7月10日まではペルージャの株式10%を保有していたが、それを同胞でペルージャ現会長のハビエル・ファローニに譲渡し、『アルス・エト・ラボール・フェッラーラ』のプロジェクトに専念することにしたと伝えられている。

 健全性に問題はないとみられるものの、モリナーリは間接的にジョー・タコピーナ前会長とつながりがあり、サポーターの間で不安を呼んでいる。

 この20年間で、3度の破綻を経験したクラブにとって、今求められるのは持続可能で盤石な経営だが、サポーターの懸念が完全に払拭されたとは言い難い。新たな経営陣は、安定したクラブ運営を継続することができるのだろうか。

(文:佐藤徳和)

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【了】

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