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J2 3か月前

「自分がヒーローに…」郷家友太はあの日の涙を力に変える。人生を変えてくれたベガルタ仙台へ恩返しするために【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人

「そこは日々のトレーニングから狙っていました」

 左サイドバックの石井隼太のロングスローが水戸にはね返され、こぼれ球を拾ったボランチ松井蓮之から再び石井へパスが供給された。パスの出しどころがなかった石井から中央の松井へ戻されたボールは、右側に顔を出した右サイドバックの真瀬拓海をへて、その間に右タッチライン際へ開いていた郷家に託された。

「真瀬くんからボールをもらって、ゴールを決めてくれ、という思いを込めてクロスを蹴りました」

 右足を振り抜いた瞬間の思いをこう振り返った郷家は、チームの約束ごとにあえて背いていた。

「チームとして相手のゴールキーパーとディフェンダーの間に(低く速い)クロスを流し込む、と言われているんですけど…あの状況であの角度からすると、ディフェンダーが一歩引いたところのスペースが絶対に空くと僕のなかでは思っていたし、そこは日々のトレーニングから狙っていました。なので、クロスに対して下がったディフェンダーの前方、マイナス気味というか平行したスペースを目がけてクロスをあげました」

 以心伝心というべきか。セットプレーの流れで水戸ゴール前に残っていたセンターバックの菅田真啓が、一度はファーへ流れようとした動きを思いとどまる。一転してニアのスペースへ走り込み、水戸のDF大森渚生よりも早く宙を舞い、頭でわずかにコースを変えてゴール左へ流し込んだ一撃に声を弾ませた。

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